Yahoo!ニュースでこんな記事が取り上げられていた。
平昌五輪 キム・ヨナを生んだ韓国フィギュアに黄信号
開催国出場枠を狙うなりふり構わぬやり方にまたも冷たい視線が…
韓国スケート連盟が平昌五輪のフィギュアスケート全種目出場の見込みを示したが、韓国メディアはキム・ヨナ引退後の強化が進んでおらず、出場は難しいのでは、出場できたとしても悪い成績に国民ががっかりして批判を受けるのでは、と危機感を持っているのだそうだ。
記事を読んでびっくりしたのは、開催国に出場枠を与える制度が廃止されることになっていたという話。ISUが2012年10月の理事会で決めたのだとか。知らなかった~
しかし、2014年6月の総会で、開催国が通常のプロセス(直前の世界選手権+最終予選)で枠を獲得できなかった場合、ミニマムテクニカルスコア(最低技術点)をクリアしていれば出場できることを決定。一応、ソチ五輪と同じ扱いになった。
記事では、“IOCが14年12月に策定した「アジェンダ2020」で五輪の肥大化を防ぐために出場人数を可能な限り抑制する理念から、開催国枠に反対を表明。結局、この決定はもろくも白紙撤回されたという”とある。
夏季五輪も冬季五輪もだとすると、2020年東京五輪なんか、日本が出られない競技がいくつも出てしまうのでは リオデジャネイロ五輪の予選に、ブラジルはまったく出場してないんだけど
ISU(国際スケート連盟)のほうは今年6月にまた総会があるから、仮に変更があるならここで決定されるはず。でも2年を切って大きな変更は混乱の元だ たぶん、平昌の開催国枠は保持されると思う。韓国スケート連盟の発表は、IOCとISUが2014年の決定を維持する方向と確認した、というくらいのことじゃないのかな?
さらに記事では団体戦の“例外規定”の話になる。1種目に限り、個人戦で出場枠を獲得していない種目に団体戦のみ出場する選手をエントリーすることができる。というルールがソチで採用され、日本も当初はそのルールを利用して団体戦に出場する予定だった(実際には、エストニアが国籍問題で枠を返上したため、繰り上げでペアの出場権を得て、4種目とも出場した)。
「技術点さえクリアすれば」と楽観的な韓国スケート連盟に対して、「捕らぬ狸の皮算用のよう」と断じているが、実際どの程度可能性があるのか、今季の韓国選手たちの成績と、ソチ五輪予選を比較してみよう。
まず、最低技術点の水準。ソチではヨーロッパ選手権/四大陸選手権と同じ点数が採用された。世界選手権はこれより14~55%も高く設定されたので、オリンピック出場は果たしたが世界選手権には出れらなかった、という選手もちらほらいる。ということは、出るだけならなんとかなるかも
今季のヨーロッパ/四大陸のミニマムを、今季の成績でクリアしている選手は、男子6人女子13人アイスダンス3組。ペアは1組いたがどうやら解散したらしく、男性が別のパートナーとババリアン・オープン(ジュニアの部)に出場。ミニマムのクリアには至っていない。
ペアだけは確かに厳しいが、韓国選手権には外国人男性と韓国人女性のペアが1組出場していた。帰化手続きができるようなら、これもなんとかなるのかも。
世界選手権で枠が得られるかどうかは、上位国がどの程度枠を獲得するかにもよる。アメリカ、ロシア、日本などが2枠にとどまると、その分、下位に枠が多く回ることになるからだ。男子24、女子24、ペア16、アイスダンス19が振り分けられる。
ソチ前年の2013年世界選手権で1枠を得た中の最下位は、男子22位(エストニア)、女子20位(イギリス)。ペアは3枠または2枠の国で16に達してしまった。アイスダンスは16位(アゼルバイジャン)。
男子はアメリカ2枠、ロシア1枠だったので、この2ヶ国が3枠になると仮定すると、18位くらいがボーダーかな。当時は205点ほど、来年だったら225点くらい必要かも。
女子は3枠を得た韓国の代わりにロシアが3枠になりそう。当時は140点台だったが、今は165点以上は欲しい。
ペアは置いといて^^; アイスダンスは16位(アゼルバイジャン)。2枠だったフランスやイタリアが3枠に増やす可能性が高いので、ボーダーは14位? アイスダンスは年によってショートダンスの課題が違うので多少得点の傾向が変わるが、目安は150点くらいか。
今年2016年の世界選手権エントリー選手を自己ベストで比較してみる。男子イ・ジュンヒョンは23番目、女子パク・ソヨン11番目、チェ・ダビン15番目。アイスダンスはレベカ・キム/キリル・ミノフ24番目。
2017年もこのくらいの順位だったら、女子だけは2枠を確保、男子とアイスダンスは最終予選に回る可能性が高い、ということになる。男子は6人、アイスダンス5組を争う。
上記の世界選手権エントリー自己ベスト順でいうと、男子は18位+6人=24番目に入っていれば目はある感じ。アイスダンス14位+5組=19番目だとすると、順位で5つ、得点で10点くらい上げないと厳しそう。
今年の世界選手権に出場する選手以外の選手を考えると、男子は世界ジュニア7位のチャ・ジュンファンが2017/2018シーズンにシニアに上がる。先日出した自己ベスト207点をさらに伸ばせれば、突破できそう アイスダンスはミン・ユラ/アレクサンダー・ガメリンが四大陸ではキム/ミノフより上だった。切磋琢磨して伸びられるか。
そしてペア、、、今ジュニアにいるペアが、意外と急成長したりして 最終予選まであと1年半あるし。
以上を総合すると、男子はなんとか1枠、女子はうまくいけば2枠。ペアは未知数、アイスダンスは最終予選に賭ける、というところだろうか。
日本だって、ペアとアイスダンスの枠は油断できないので、、、他人事じゃない 枠をとってきた選手が、国籍がらみで出られないケースもありうる。国籍問題がない選手のほうがレベルが下かもしれない。
「最低技術点のクリアに目標を置く低レベルな選手が出場して、自国民は応援できるのか」という記述は、「そんな選手、応援したくないよね~」と言われてる気がする。書いてる記者さん、日本の現状についてはどんな意識? 応援したくないのかしら
記事では、韓国スケート連盟が、あれこれ手を回して枠を獲得しようとしている印象を与えるが、“働きかける”のは連盟として当然の仕事だし、最終的にISU総会での決定に従うのであれば、それで問題ないはず。
詳しい出場枠獲得システムは、今年の秋ごろ発表されると思われる。それを見てから、あらためて議論していただきたい