フランスで国民戦線のルペン党首が大統領選挙の決選投票に残った。これに反発する人たちのデモがパリなどで行われている。移民問題が槍玉に挙がっているようだが、単純に排外主義と決めつけるのは問題である▼梅棹忠夫の文明の生態史観の考え方は、私たちに多くの示唆を与えてくれる。『日本とは何か 近代日本文明の形成と発展』のなかで「日本文明の形成過程と西洋文明の形成過程とのあいだには、歴史的平行現象がみとめられます」と書いていた。梅棹はユーラシア大陸の旧世界を、東西の両端と、それ以外の残りの地域とを区別するのである。東西の両端では民主主義が培われ、資本主義も順調に発展してきた。それ以外の残りの地域は、中国、インド、地中海やイスラムの四つであるが、大帝国が建設されて、その周辺は衛星国になった。暴力が横行するすさまじい世界である▼日本は中国と同じアジアではあっても、和が重視され、暴力とは無縁な別天地であった。しかし、移民のほとんどは、日本やヨーロッパ以外の人たちである。未だに独裁政権の圧政下にある。暴力を行使するにあたっても、何のためらいもないのである。日本とは文化がまったく異なるのである。その人たちと共存共栄ができるかとなると、はなはだ心もとないのではないだろうか▼極右の排外主義と批判するのがたやすいが、ルペン党首に投票したフランス国民は、文明の衝突を恐れたからなのである。
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日本とは何か―近代日本文明の形成と発展 (NHKブックス) |
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