オウム真理教とは何であったのか。知的にエリートと評された者たちが多数加わっていた組織で、坂本弁護士一家殺害や、松本サリン事件、さらには地下鉄サリン事件を引き起こした。平成元年から平成7年にわたって、異様なカルト集団が、罪もない人々を殺戮したのである▼代表の松本智津夫ら7人のオウム真理教関係の死刑囚に刑が執行された。29人を殺害し、約6500人が被害にあった。裁きを受けるのは当然のことである。間違っても殉教者に仕立てあげるようなことがあってはならない▼彼らのような人間がなぜ生まれたのか。竹山道雄の言葉がヒントを与えてくれるのではないか。「人間はなまの現実の中に生きているのではなくて、彼が思い浮かべた現実像の中に生きている。もし彼が激しい要求をもっていると、彼はこの現実像をただ要求にしたがって構成して、それを生の現実とつき合わせて検討することを忘れてしまう」(『昭和の精神史』)▼竹山はそれを「第二の現実」と呼び「ある特定の立場から材料の取捨選択をしてモンタージュしてでき上ったものである、現実を写しながら現実とは別なものである。この映画は、それ自身の中に因果の法則をもち、筋書をもち、興奮させ陶酔させる」(『同』)と書いていた。日本人の常識を培ってきた歴史や伝統を否定された日本人は、抽象的な観念論に支配されるようになっててしまった。そこで誕生した怪物がオウム真理教だったのである。
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