ニュージーランド・クライストチャーチで昨日起きたモスク襲撃事件は、常軌を逸したテロ行為であり、世界が絶望的な危機に瀕していることを教えてくれる。人々が自由に世界を行き来することが可能となり、習慣や宗教の異なる人びとが、隣人として暮らすことが、どれだけ難しいかを、またもや認識させられた▼逮捕された三人のうちの一人が銃撃するさまをフェイスブックで生中継していたことも驚きであった。自分たちと宗教が異なる人々を殺害するさまを、「見せしめ」として全世界に向かって公開したのである。車内の様子が映し出されてから、車で逃亡するまでの約17分間にわたる無差別殺戮のシーンである。人間の血が通っていれば、絶対にできないことである。まるでゲームでも楽しむかのような感覚で、犯人は銃の引き金を引いている▼私たちはグローバリズムの幻想を捨てるべきだろう。かえって「文明の衝突」を招きかねないからだ。とくに白人至上主義者は、自分たちが追い詰められているとの被害者意識を抱いており、今回の場合もそれが背景にあるのではないだろうか。私たちは現実を直視しなくてはならない。文明間の衝突を避ける工夫を講じなくてはならない。国家の役割も見直されるべきである。それぞれの国家の成り立ちは、歴史や伝統にもとづくものである。それに共感する人びとによって維持されることが望ましい。国境をなくせば、混乱と無秩序が支配する世界を招き寄せるだけなのである。
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