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空想歴史ドラマ 貧乏太閤記 77 本能寺1

2022年11月28日 17時05分21秒 | 貧乏太閤記
 秀吉は高松城が低地の盆地状にあることに気づいた「そうであった!」
そして水攻めと言うアイデアを考え出したのだった
しかも季節は雨季を迎えようとしている、もってこいの戦術であった
5月初旬、秀吉は全兵力で高松城攻めを開始した、凡そ3万に及ぶ大軍でぐるりと高松城を取り囲んだ、それから秀長の家臣で土木に詳しい藤堂高虎という新参武士を奉行に抜擢して巨大な水防土手の建設を始めた。
田植えも終わって暇になった近在の百姓を動員して、世間の3倍もの日当を払って土嚢を作って運ばせて長さ4キロ、高さ5mにも及ぶ大きな堤で高松城を囲った、もともと高松城は窪地にあるから堤防が満水になれば高松城は4mほど水没するであろう、
土手の外側には見張り所と柵および付城、砦を築いて毛利の援軍が救援できぬようにしたのは鳥取城攻めと同様であった。
河と堤の境目を切った、雨続きで水量があふれんばかりの川の泥流は一気に低地の高松城めがけて、渦を巻きながらドドっと流れ落ちて行った、しばらくすると高松城は湖水の浮き城のようになっていた。
これでは船がないと逃げることも救援に向かうこともできない、またしても羽柴軍は戦わずに敵の自滅を待つだけになった
その間にも安国寺恵瓊を通じて毛利との和平交渉は続けている。

 秀吉は仕上げに信長に遣いを送った
「わが主は高松城を水攻めにして、蟻一匹入れぬよう守りを固めております、しかし毛利もこのまま黙って見過ごすとは思えませぬ
このまま高松城を見捨てれば、他国の国人は雪崩のようにわが方に寝返るでありましょう
毛利の威信と存続をかけて全力で当たってくれば、4~5万の兵で最後の決戦を挑む公算が高いと思われます
それを阻止して、戦を回避して従わせるにはもはや、お屋形様のご出馬しかありませぬ、ぜひともご出馬お願いいたします、秀吉伏してお願い申し上げます」
「ははは、藤吉郎め、最後の華を儂に持たせようというのであろう、相分かったと伝えよ、だがしばらくは動けぬ、越後が片付けば出陣するから、その前に援軍として誰ぞを遣わそう、そう申せ」

 5月に入ると徳川家康の安土来訪を控えて慌ただしくなってきた、饗応役を任せられた明智光秀は特に忙しくなった
27日に安土城で行われる宴には池田恒興、中川清秀、高山右近ら摂津衆、蒲生賢秀、山岡景隆ら近江衆、それに息子の織田信雄、織田信孝、さらに丹羽長秀なども招かれ、公家からは近衛前久を主賓に数名が招かれている
準備に追われている光秀にただならぬ噂が耳に入った
 昨年信長は、四国で威を振るう長曾我部元親に従うよう勧告したが、聞く耳を持とうとしなかった
元親は、明智光秀の家老、斎藤利三と親戚関係があったので光秀に命じて長曾我部を懐柔させた、以後長曾我部の折衝は光秀が任されていた。
だが、信長が光秀に何も言わず、突然「四国攻めをする」と宣言したというのだ
2日ほど様子を見ていたが、噂が具体的になって来た
織田信孝を大将にして、丹羽長秀を副将として河内の諸将が従い3万の軍勢で渡海して四国を攻めるということが明らかになった
翌日、光秀は信長に面会を求めた、信長もあっさりと会うと返事が返って来た
二条城に尋ねると、信長は穏やかな表情で光秀を迎えた
「おお日向、三河殿の接待の準備はすすんでいるか」
「はい、順調に進んでおります」
「さようであるか、粗相のないようにしっかりやるがよい、ところで今日は何用じゃ」
「はは、洛中にて不穏な話を耳にしたもので、お屋形様からお聞きしたいと」
「ふむ、儂がかかわることであるか」
「さようでございます、いかなることかと、お聞きしたいと思いまいりました」
小姓の森蘭丸が緊張した
「なんじゃ、深刻そうな話のようじゃのう」
「単刀直入にお聞きいたします、長曾我部のことです」
「ふむ」信長も真顔になった
「お屋形様が四国攻めを三七様(織田信孝)にお命じになったとの噂がありますが、まことでございますか」
「ああ、そのことか、たしかに命じた」
「まことであると申されますか」
「いかにも、それがなんじゃ」
「長曾我部のことは、某に任せたとのことであったのでは」
「いかにも、そのように申したが」
「ならば、某に話がないうちに四国攻めを命じられたのはなぜでございますか」
「ほほう、儂がやることはそなたにいちいち相談せねばならぬというのか」
「いえ、そうではありませぬ、長曾我部のことについて申しております」
「長曾我部は儂に従わぬ故、攻めることにしたのじゃ、そなたに相談してからなどと悠長なことを言って居れば勝機を逃してしまうわ」
「それはいったい」
「長曾我部には讃岐だけ織田家に差し出すよう申し付けたのじゃ、ところが『儂の力と家臣の血で得た領土は一寸たりとも渡せませぬ』と頑としていうことを聞かぬ、ゆえに力には力であたるしかあるまい、阿波と伊予の二国の領有を儂が認めたのだからそれでよいではないか」
「しかし、お屋形様は拙者が長曾我部殿と交渉を締結されたときに四国全土切り取り許すと言われたではありませぬか、それを今になって覆されては長曾我部殿も納得できますまい」
「光秀!うぬは儂の家来か、長曾我部の家来か!」ついに信長は怒りを爆発させた、それでも光秀は引かず
「お屋形様、今一度ご再考くだされ」にじり寄った
「くどい! 蘭丸、光秀を打ち据えよ」
森蘭丸は手にした扇子で光秀の額を二度打ち据えた
「ええい!生ぬるい」今度は信長が光秀を足蹴にした、光秀はどっと後方に転がった「なんと! お屋形様」
「せっかく儂が、お前を佐久間に代えて次席家老に取り立てようとしているものを、お前は増長しおって、洛中での評判を聞いたか、お前のために儂まで朝廷の覚えがわるくなってしまうわ」
「・・・・・」
「もうよい下がれ、気分が悪い、三河殿の饗応役も別の者に任す故、即刻饗応役から降りるがよい」
信長は足音も荒々しく踏み鳴らして別室に下がって行った。
取り残された光秀の目には悔し涙がこぼれた。




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