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体験談というもの

2015-06-12 11:16:22 | Weblog

戦後70年を生きている私達の周りには『風化させてはいけない』という言葉があふれている。災害や事件があるたびにマスコミも街の声も、異様に一様に、『いつまでも忘れないように・・・・・』と繰り返す・・・・・・・・だけど、

               私はそのことに疑問を感じています。

『こんなことがあったということを忘れてはいけない』・・・・・そうだろうか?????・・・・・私達は横田めぐみさんの身の上に起こったことを『忘れていない』だろうか?????・・・・・世の中の『忘れない』という言葉の意味は、『時々思い出すことが出来る』ということに過ぎないのではないだろうか。そうでないなら、私達も横田さんご夫妻のように、懊悩と模索の中に暮らしているはずです。『同情』という言葉は、脳の波動という観点からは、『同じ心(或いは、同じ心を起こしていること)』を意味すると思いますが、波動には濃度差というか個人的差があるので、結果的に嬉しい同情もあれば有難くない同情もある・・・・・・要するに個人差があって、良くも悪くも影響が出るんです。そして横田めぐみさんたちの問題を解決できないのは、『同じ心』の問題でも『忘れない』という記憶の問題でもなく、私達日本人の困難解決という『政治力』、あるいは『国力』、あるいはまた『国民力』という別の問題なんです。

 

もともと『体験』というものは個人のものだと思います。『忘れない』というけれど、私達は忘れないと生きていけないものなんです。それで忘れるようにできている・・・・・学習は出来るけれど、忘れないことは出来ない。そしてその学習さえ厳密に言えば個人的なものです。確かに人間の脳は、記録や偉人伝を読んで自分の体験でないことも想像することは出来るようになりました。ですが、同じものではないし記憶でもありません。ですから、体験談を聞いてもそれは想像なんです。それを私達の社会は『記憶を風化させない』ためにと言って、『体験談』というものが特別に扱われてきました。

 

そこに『偽善と欺瞞』を感じないわけにはいきません。個人的なものである体験を普遍化すると・・・・・・それがたとえ善意で行われていたとしても、結果として『自分は知っている』という勘違いを引き起こすことになる・・・・・・そして体験談にかたられていない数万倍もある出来事を無視することになる・・・・・誰かの体験談はその人個人のもので、その事態全体ではないんです。その人の真実を語ってはいるが、みんなの真実かどうかはわかりません。悲しい事態、嬉しい事態は共有できたとしても、そのことで同じく悲しい事態が引き起こされるか嬉しい事態が引き起こされるかはわかりません。基本的に普遍化も一般化も出来ないものなんです

たとえ辛くても、たとえ人道的でないと言われても、この事実を心の底から納得したうえで、体験談というものは扱われるべきであり聞くべきものなんです。若い人たちが『戦争の悲惨さを語り継ぐ・・・・・・』『災害の悲惨さを語り継ぐ・・・・・』『私達は忘れてはならない・・・・・』と言っているのを聞くたびに、心の底から身震いを感じてしまいます。彼らは何も知らないのでは?????克服すべきセンチメンタリズムに陥っているのでは?????戦争の悲惨さを語っても戦争を回避できない世界の諸事情を見つめてください。方法論がなければ虚しいだけです。久司先生は『食による平和活動』を桜沢先生から受け継がれましたが、見果てぬ夢と仰って生涯を閉じられました。

世界中で平和に対する方法論を提示できたのはマクロビオティックだけです。久司先生は3000年かかるだろうと言われました。だったら3000年間私達マクロビオティックの弟子たちは『忘れない』実験をする以外にないようです。そして思ってしまいます。食によって平和を達成できるとマクロビオティックは言っているのに、平和が好きな日本人が大して真剣に取り組もうとはしない・・・・・これはいったいどういうことなんですか?????

 

そもそも『知る』ということがどういうことなのか、これこそが教育の突き詰めるべき課題です。これなくして教育をしていると、どんどん薄っぺらなものになる・・・・・・思い違いの上に人も国も生きることになる・・・・・・。私達一般大衆の個々人は体験談のセンチメンタリズムでも構いませんが、全体としてはセンチメンタリズムを超えなければ将来が危うい!!!!!志ある若い皆さん、目を見開いて自分のうちを見つめ、『知る』ということを探求してください!!!!!


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