京都 天龍寺では、拝観受付の正面に達磨図が飾られている。
庫裏の奥にある書院の床間にも達磨図のお軸が掛けられている。
筆者は同じ人だと想像はつくが、庫裏の達磨さんは赤の法衣を頭から覆っている。
一方、書院の掛け軸の絵は黄色の法衣である。
訪ねた際に眺めては手を合わせる。とくに天龍寺の達磨さんはとてもいい表情をされているように思う。
昔から睨めっこする相手が達摩さん。勝てる相手ではないにも必死に厳しい顔を笑わそうと頑張った記憶がある。オバケと達摩さんは怖いものだとインプットされている。
大人になって、達摩さんは中国のお坊さんであり、インドから仏教を中国に伝えた偉い僧侶、達摩大師であることを知り、それ以来、厳つい表情を含めファンになっている。
天龍寺に掲げてある黄色と赤の袈裟の着ている達磨図は、インドでは僧侶の袈裟は黄色が使用されている。一方、日本の起き上がり小法師としての達磨さんや達磨図のほとんどが赤色を基調とした袈裟が一般的である。
日本では、古来から魔除けとして火の赤がよく使われる。その効果があると信じられていることから、達摩さんのあの怖い顔には “魔除けの僧侶” としての姿が似合い定着した。
そして、もう一つ達磨さんには大きな役割が授けられている。それは、起き上がり小法師の達磨さんである。9年という長い間、面壁坐禅で修業した達磨さんの坐禅姿が倒れても起き上がり小法師に写され、達摩さんは不撓不屈の精神の象徴とされている。
天龍寺の受付入口の達磨図は、少し苦みばしり、お軸は少し穏やかな表情をされている。筆者は穏やかな方だろうと推測するが、絵のそばにあった木版には達摩図とあり、その横に天龍寺前管長 平田精耕 筆と記してあった。