終わってみれば、野球の神様が日本に「世界一」を与えた。予選リーグの舞台日本から勝ち進み米国マイアミに。日本の強さを世界に示すステージとして野球の聖地米国で、準決勝メキシコを撃破、そして決勝対アメリカ戦が仕組まれた。
その決勝戦、2回に米国に1点先取されたが、その裏に村上が悲願のホームランで同点に。その後、満塁で1番ヌートバーの一塁ゴロの間に3塁走者がホームベースを踏み逆転。4回に岡本が左中間にホームランを放ち2点差にした。
このまま日本の勝ちが予想されるわけでもなく、米国の反撃にヒヤヒヤしながら8回を迎え、栗山監督が絵描いた筋書きどおり、ダルビッシュ有が満を持してマウンドに上がった。そして最終回の抑えに大谷翔平という最終シナリオができていた。
ダルビッシュ有がワンアウトを取り、迎えるバッターが昨季46本塁打を打ちナ・リーグ本塁打王に輝いたシュワーバーである。ファールを重ねたあと、右中間にホームラン。これが野球ファン誰もが知るメジャーリーガーの怖さである。2点差なら9回の表に大谷がしのいでくれるはずである。それが、である。1点差になり、いくら大谷でもプレッシャーがあまりにも強すぎる。打者としてベンチに入り、8回から投球練習を始めベンチとブルペンを行ったり来たり。こんな野球選手は前代未聞である。打者、走者としてフル活動しているにも関わらずブルペンに行って投球練習をする。
迎えた9回の表、泥だらけのユニフォームでマウンドに上がった。ツーアウトを迎え、残すはあとひとりで世界一の称号が手に入る。最後の打者が、大谷の同僚であるエンジェルスの4番マイク・トラウトである。ホームランでも打たれれば同点。流れが完全に米国になるのは誰もが分かっている。ツーストライクから次に投げたスライダーでトラウトはかなぶり三振。グローブを投げ帽子を放り投げ、大谷は叫んだ。
終わってみれば、誰もが描く筋書き通りである。これをやってのけた日本野球の実力を見せつけるクライマックスであった。日本選手が実力を発揮できたのは、マイアミまで誰かが連れて行った「野球の神様」が大きな大きな力を天から降らせたのに違いない、そんなWBCだったような気がする。
リポート/ 渡邉雄二 写真/ テレビ朝日のTV画像より
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