「焼き物は、人生最後の趣味」と言われているそうだ。誰がいつ言い出したのか、定かではないが・・・・これにも集める趣味と作る趣味があるらしい。
陶芸教室の看板を揚げているわけではないが、「どうしても作陶したい」と頼まれることがある。ある時その男は、徳利とぐい呑みを作りたいと言う。よほどの酒好きなのだろう。
手ロクロは使うが、手びねりだから、いびつもいいところ。しかし、本人は、唯無心に必死にやっているだけなのだが、いつの間にか、いびつがいびつのまま,様になっている。これが芸の極致なのだ。
最後にその男が言った。「今日ほど、こんなに頭が真っ白になったことはない。楽しかった」
「良かったですね」と言ってみたものの、私は、これは喜ぶべきことか、悲しむべきことか、考え込んでしまった。