200
原発の望遠映像かげろえる 薪
髪の癖直らぬままや古雛
銭湯に十二単衣のおひなさま 炎火
奥州に関八州に春の雨
ひと言の礼受けられよ鶯よ 侠心
煤けたる座敷照らせる雛かな
青き踏む二人で一本缶コーヒー 洋子
おしゃべりと聞き上手いて蓬摘む
河津桜向かいの岸に夫の影 章子
箱を出て古き雛のまぶしめり
春の嶺畳々として横たわる 豊春
啖呵切る男の眸春の山
春の雪連山街に迫りくる 鼓夢
薄暗き部屋に朱飛ぶつるし雛
孤独と自由授かりて春寒し 遊石
春寒に折り合いをつけ生きて行く
よく喋る娘になれり牡丹の芽 雲水
誰一人帰って来ない雛祭