松丸本舗は、著者が考えた理想の本棚を持つ実験的な書店で、オープンからわずか3年で閉店してしまった。この本では、この書店の企画から閉店までの経緯を著者自身が解説し、またこの書店を訪れた著名人の感想も併せて収録している。
松岡正剛の本を何冊か読んだことがあるが、予備知識が無い自分には難解でとっつきにくかった印象がある。博覧強記で独自の観点を持つ彼の理想の書店がどのようなものか興味があり読んでみた。
まず写真を見た印象として、予想した通り緻密に練られたコンセプトで、ある程度教養のある人には理解できる面白い書店だったようだ。本をテーマごとに分けて、本と本の繋がりが判るように並べる。それで知の世界の広がりを表現する。書店にはフリーに動けるアドバイザーを置いたり、本棚の形を工夫したり、本を縦横に積み上げたり、本に纏わるグッズを提案したり、様々な面白い試みがされていたらしい。本好き(特に教養書)には、居心地の良い空間だったのだろう。著名人の寄稿も、この書店の面白さを好意的に紹介する内容が多かった。
わずか3年で閉店してしまったのは、商業的には上手くいかなかったということだろう。本棚も見た目は面白いけれど、難しい単行本が多く、気になる本があっても本棚から抜くのに抵抗があったのかもしれない。本があり過ぎて居心地が良くなかったのかもしれない。購買意欲を上げる何かが足りなかったのだろう。それは実際に行った人しか判らないと思う。もし今後、松丸本舗が再開される事があれば、是非訪れてみたいと思う。
ちなみにこの本は、500ページ余りで内容も上手くまとめてあるが、分厚くて持ちにくくて疲れた。著者の専門である編集工学を活用して、もう少し薄くて持ちやすい本にして欲しかった。