500年前の画家の生活を知る書簡集。
アルブレヒト・デューラーは、ドイツ・ルネサンス期の有名な画家です。彼の家譜や覚え書き、手紙等の自伝的な資料を集めたのがこの本です。デューラー家には、記録癖があったらしく、家系や手紙に家の事や置かれた状況がこと細かに記されています。500年前の手紙によって、当時の画家とパトロン、支えてくれる家族や仲間の様子が知ることができて、とても興味深い内容です。
デューラーの母は、大変な多産であって、24年間で18人も子供を生んだことが記されています。第三子であるデューラー54歳の時に書かれた家系ですが、その時点で生きていた兄弟はわずか3人で、ほとんどが幼くして或いは成人した後に亡くなっているようです。現在の状況を考えるととても想像できないくらい、厳しい生活だったようです。画家としての彼も自己の生活のための金策に苦労し、パトロンや支援者に絵やお金に纏わる出来事を細かに報告している様子がこの書簡から読みとれます。自画像に見られるような静かに佇む彼の姿とは違って、ブラックジョークが好きだったり、パトロンに対して辛辣な意見を書いたりする画家であり、或る意味画商でもあったデューラーの真の姿を知ることができます。