引退した競走馬とそれに携わる人たちの活動を追ったノンフィクション。
著者は動物愛護関連の著書がある作家で、競馬ファンではないが、引退した競走馬の共同オーナーになったことをきっかけに、競走馬のその後について調べるようになる。競馬業界の引退馬の現状とJRAの取り組み、JRAの角居元調教師の活動などを中心に、引退馬のその後のキャリア構築に地道に取り組む人たちの姿をインタビューや体験を通じて紹介する。引退競争馬を引き取って生涯面倒を見る馬主もいるが(それも素晴らしい事だが)、引退馬を再トレーニングして仕事を与え、人々の生活に役に立てる活動を目指す人達がいる。長年、競馬ファンを続けているが、競争馬の引退後の様々な取り組みについては知らないことが多く、いろいろ勉強になった。引退馬に関心がある人は勿論、競馬ファンにも一読する価値がある本だと思う。
因みに、競馬を始めた頃、競争馬の引退後が気になって、競馬を教えてくれた知人に聞いたら「馬は経済動物なので、引退した後の事なんて知らない」「人間に喰わせてもらって、レースに出るだけで幸せだろう」と宣った。毎週、パドックを廻る馬を見ながら随分冷めているなと思った事がある。彼にとって、競争馬は「走る機械」なのだろう。大方の競馬ファンにとって、競争馬が引退したらそこで終わり。その後については関心が薄い。(G1馬やアイドルホースは別として)でも目の前の1頭の馬と向き合うと、安易に「経済動物」と言えなくなると思う。