この本では、壊血病が解決するまで(駄洒落じゃないけれど)の歴史と、
壊血病の予防に取り組んだ3人の人物リンド、クック、ブレーンの功績を紹介している。
壊血病の原因は20世紀になるまで特定されなかった。大航海時代の軍医達は発症時の
対処法、発症しないための予防法を発見することに注力し、レモンやオレンジ果汁が
効果があることを突き止め、効果を挙げた医師もいた。
しかし、政治や経済的な理由でその対策は葬られ、当時の権威とされた医師や軍や
政治家のトップの意向が反映された対策案(麦汁)が予防薬として永年に渡って使われた。
しかし効果はほとんど無く、そのため多くの船員を喪失する。
リンドは船医としての経験からレモン等の柑橘系の果物に効果があることを
突き止めたが、その対策は費用対効果が疑問視され、また自身の社会的な地位が
低かったこともあって、耳を傾ける有力者がおらず普及には至らなかった。
また、クックは4度の世界周航で壊血病による死者をほとんど出さなかった。
彼は船内を清潔に保つことと、毎日自ら率先してレモン汁を摂取し、船員にも寄港時に
新鮮な野菜や果物の摂取を薦めた。しかし、彼は科学者ではなく、こちらも原因の
特定には至らず、逆に権威に負けて麦汁の効用を認めてしまう。
ブレーンは、上流階級の出身らしく自らの意見を堂々と主張できる立場にあり、
リンドの対処法、クックの実績を踏まえて、レモン汁の効用を主張する。
戦争が頻発した時代で、フランスやスペインの船員や兵がこの病気に苦しんだのに対し、
イギリス海軍では発症率が低く、戦力が維持できるためその強さが際立ち、多くの地域を
制覇することとなったらしい。壊血病への対応は、歴史を変えた一因となったと著者は
考察する。現代において、壊血病で亡くなる人の話を聞く事はほとんどないが、
ビタミンCが不足する状況、例えば天災等で食料不足になった場合や飢餓が発生した地域、
偏った食事を続けた場合(ジャンクフードばかりの食生活)に症状が現れるので、
今でも注意は必要という。
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