昔々、あるところに時間を持て余したおじいさんとおばあさんがいました。仕方ない、山に芝刈りにでも行くか。そう言っておじいさんは山に芝刈りに行きました。何を隠そうおじいさんは芝刈りの達人。知る人ぞ知る芝刈り名人だったのです。おじいさんと同等の実力を持つ者は、その辺の街にはいないとされていました。仕方ない、川に洗濯にでも行くか。そう言っておばあさんは川に洗濯に出かけました。おばあさんは山よりは川の方を愛していました。
どんぶらこ♪
どんぶらこ♪
おばあさんが一休みしていると、小舟に乗って桃が流れてきました。
ペッ♪
おばあさんは、川につばを吐いて不満を表しました。桃はそのまま下の方に流れていきました。
どんぶらこ♪
どんぶらこ♪
続いて小舟に乗ってキャベツが流れてきました。
ペッ♪
おばあさんは、またもやつばを吐きました。キャベツにしても、おばあさんの望むようなものではありませんでした。
どんぶらこ♪
どんぶらこ♪
今度は小舟に乗ってメロンが流れてきました。小舟全体が黄金の光を纏っているように見え、おばあさんは思わず川から身を乗り出しました。ついにおばあさんの願うものが流れて近づいてきたのです。
「そうそうそれよ。もっとこっちにおいで」
その時、小舟は小刻みに振動し始めました。あと少しというところで急激にターンすると、対岸に向かって進んでいきました。
おっとっと♪
おばあさんよりももっと強く望む力が、向こう側から働きかけたのかもしれませんでした。おばあさんは我に返って洗濯を続けました。
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