眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

マルチワーク時代のタイムシフト・オペ

2023-07-23 09:13:00 | ナノノベル
 私たち人間の時間は飛躍的に長くなった。例えば同じ時間であっても、その中でやれることは圧倒的に増えた。幸運なことに、昔の人と比べ私たちはたくさん生きられるようになったのだ。かつてはこれと決めた一つの職に生涯かけて打ち込むことが普通だった。今は興味さえ持てばより多くのことに挑戦できる。言ってみればゲーム感覚で。何をするにも特別なスキルは必要ない。あるいは習得時間が短縮された。AIやアプリが人間を助け、足りない部分を補ってくれている。私は寿司職人であり宮大工であり将棋の棋士であり弁護士であり画家であった。そして……。
 今、私は手術台の上に横たわっている。
 まもなく私のオペが始まる。あるいは終わっている。
 昨日、既に私の手によってオペは完了した。これよりここでその結果が再現されるだけだ。AIは99.99パーセントの成功と診断した。

「大丈夫。自分を信じて」
 私は目を閉じた。

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ピコの冒険(体験学習)

2023-07-17 03:41:00 | ナノノベル
 表に出たらめまいを覚えた。やけに視界がぼやけている。あの大空に飛び立つことが想像もできなくなっていた。できそこないの朝のように、すぐ先にある看板の形さえもぼやけて見えるのだ。ずっと閉じこめられていたせいか、栄養が足りていないためか。もしも自分が機械なら、スイッチが入らないまま、壊れてしまうのかもしれない。歩道をはみ出しても霧は晴れない。もう戻れないのか……。(いったいどこへ)

「そんなところにいたらひかれちゃうよ」
「いい。僕は飛べないから」
「危ない!」
 乱暴な猫に突き飛ばされる。
「何するんだ」
「そっちこそ!」
 わからない。自分が何をして生きてきたのか。
 現在地だってわからないのだ。
「一緒にくる?」 
 猫の足は速すぎる。


「ここは安全よ。理解のある人しか来ないから」
「ここで働いてるの?」
「まあ見ればわかるわ」
 猫の業務は微妙な形態だった。
 じゃれ合いの中、気まぐれの中、眠りの中、つまみ食いの中、愛嬌の中、それぞれの孤独の中にあった。時々、人間たちがやってきて、気まぐれの中に入り交じった。喉を潤したり鳴らしたりしながら、背中を撫でた。夢から醒めた三毛猫が古宿を捨て、新しい本棚に飛び移った。
「あなたもやってごらん」
「僕は飛べないから」
(それは僕の領域じゃないんだ)

「この子は無理なの。ゆっくり歩いて来たのよ」
「ねえ。僕もいていいの?」
「もういるじゃない」
 そんなことじゃない。立ち位置についてだ。
「何が働いているかわからないものよ」
「僕は何もしていない」
「何より愛想が大事なの。指名を得るにはね」
「指名?」
「人に興味を持ってもらうこと。誰かのお気に入りになることね。だんだん好きになってもらって、やがて最愛になるの。生活が変わるわ」
「どんな風に?」
「さあ、もう次に行かないと。ママまたね」


 次の職場に向かう猫の後をついて行った。
 猫は歩くのが速い。
「かけもたないとね。これで食ってるの」
「いつから?」
「ずっと昔からよ」
 日が落ちかけていた。
 昔……。何か懐かしい響きだった。

「僕、もう行くよ」
「思い出したの?」
「うん。たぶんね」
「そう……。やってごらん」
「ありがとう」
 陸の生き物に別れを告げた。
「飛べるのね。やっぱりあなたは鳥の一羽ね」
 
 さようなら。
 私はこの道を、あなたはあの空へ。

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ドラゴン寿司

2023-07-12 23:55:00 | ナノノベル
 カウンターにかけると一間竜ほどの距離で大将と向かい合った。

「二枚銀を」

「あいよー」

 まずは小手調べに二枚銀だ。

「へいお待ち、二枚銀です」

 よい腕だ。早く、正確で、味も申し分ない。

「銀矢倉と銀冠を」

「あいよー」

 順番だ相性だと気にする者もいるが、寿司は自分の好きに頼むのがいいだろう。

「へいお待ち、銀矢倉と銀冠です」

 くーっ、利かせやがったな! いくら山葵が強く刺激してきても、表情なんて変えるものではない。寿司はデュエルではないか。安易に弱みは見せられない。

「腰掛け銀と早繰り銀を」

「あいよー、銀がお好きですかい」

「まあそうね」

 今日は銀尽くしといこうじゃないか。

「へいお待ち」

 おっと、これは何だ?

「カニカニ銀、こちらはサービスで」

「あー、これはバランスが取れてますな」

 なんて素敵な店だろう。調子に乗って行くか。

「銀多伝を」

「……」

「金目鯛ですな」

「銀多伝を」

「お客さん、申し訳ない。銀が切れてしまって」

「何?」

 ウォォオォォーーーーーーーーーーーー!

 その瞬間、私は燃え上がる龍となり大将を丸飲みした。

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鈴木さんちのキャベツ

2023-07-02 09:09:00 | ナノノベル
 空腹時にはスーパーに行かない主義のおばあさんが迷ったのは、目当てだったパン屋が歯科医に姿を変えていたからだった。すぐ隣にあったコンビニは今では高層マンションだ。まるで別の街に来てしまったようだった。歩きすぎてしまったのだろうか。

「今は何年ですか?」
 おばあさんは、思わず道行く人にたずねていた。

「3年生!」
 少女は得意げに答える。(転校生だった自分となぜか仲良くしてくれたみっちゃんに似てる)おばあさんは少し昔のことを思い出して、西の空を見上げた。

(あったあった)

 スーパーはあるべきところにあった。店に入ると中は80年代ディスコのような様子に変わっていた。肉屋の隣にフライコーナーができている。パン粉をつけた椎茸、蓮根、海老、アジフライ、ハムカツ、メンチカツ……。どれもみな美味しげだ。けれども「できあがったものを買うよりは他にできることはないのかしら」とおばあさんは思う。
 遠回りしてたどり着いた青果コーナーは空っぽだった。

(また店長が変わったな)

「お待たせいたしました。まもなく東入り口より鈴木さんちのキャベツが入ってまいります。本日は遠方より鈴木さん自らが責任を持って運んでまいりました。どうぞ拍手でお迎えください!」

パチパチパチ♪

 三輪車に乗ったおじいさんが、ゆっくりと青果コーナーに向かってくる。あれが鈴木さんだろうか。

パチパチパチ♪

 おばあさんもつられて手を叩いた。

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うそつき将棋

2023-06-29 00:19:00 | ナノノベル
「次で最後にしよう」
 最後。それは僕にとって希望の言葉だった。いつまでも客に居座られては、僕の立場は変わらない。いつまで経っても傍観者であって、プレイヤーに成り上がることはかなわない。最後。それを聞いた瞬間、僕は喜びを押し殺しながら見守っていた。

「まいった」
 どちらが駒を投じたかは問題ではない。これで客人が帰る。そして、おじいちゃんは僕と対戦しなければならないのだ。

「どうも納得いかないな。銀が浮かばれない」
 敗者は首を傾げ、勝者は余裕の笑みを浮かべている。
「冴えなかったな」
「もう一局。勝っても負けてもこれで最後に」
「じゃあ、もう一局だけな」

(今のが最後だったのでは?)
 僕は口を挟めない。約束は二人のものだったから。
 敗者が先番となってすぐに最後の対局が始まる。

 おじいちゃんは振り飛車の使いだ。角道は止める時と止めない時とがある。おじいちゃんの将棋は気まぐれだ。挨拶にはろくに応えない。借りたものは返さない。遠慮を知らない。まるで辻褄が合わないこともする。普通だったら頭ごなしに怒られるようなことも、「面白いじゃないか」と押し通してしまう。棋理の中では日常のモラルなんて歪んでしまう。おじいちゃんの将棋は、海賊振り飛車なのだった。

「負けたな。どうも納得いかないな……」

 敗者は約束のことなど忘れもう駒を並べ始めている。(納得のいく将棋)そんなものは名人にだってそう指せるものではないのだ。

「角の顔が立たない。もう一局。これで最後な」

「これでほんとに最後な」

 繰り返される対戦を見守りながら、口約束と指し将棋の魔力を知った。やがて、客人は帰り、僕は初めて観る将から棋士へとなることができた。ようやく巡ってきた手番だったが、僕に許されたのは最後までたどり着かない一局だけだった。大好きな飛車を取り囲んで馬でプレスをかける。進退を問いかける一手に微かな寝息が応えている。千日手へと続く攻防の中で、おじいちゃんは力尽きてしまった。みんなあの客人のせいだ……。

「僕が手を変えるのに」

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天使の跳躍(神の使い)

2023-06-27 01:59:00 | ナノノベル
ぽちゃん♪

 古池に飛び込むような音がした。
 どこから?
 誰かの着信か。近所の家の窓が開いていて、テレビの音が漏れたのか。あるいは、どこかに本当に池があって、蛙が実際に飛び込んだのか。それとも、脳内で突然ふっと湧いた音だったのだろうか。
 もう一度、こないだろうか。再現されることを期待して耳を澄ましていたが、音はそれっきりだった。
 歩き煙草の男に追いつかないように、僕は風を踏みながら歩いた。ゆっくり、ゆっくり。決して近づいたりしないように。
 どこへ?
 あまりにゆっくりなので、駅はもうみえなくなった。


 気がつくと僕は王座の広場に来ていた。
 そこには哀れな蛙と困った王がいた。

「蛙を笑わせた者には好きな褒美を与えようぞ!」
 王の宣言を皮切りに様々な芸が飛び交った。
 ルールも順序も無用。とにかく笑わせた者が勝ちなのだ。

「9.87蕎麦をもらおうか」
「よそ行ってちょうだい」
「馬鹿野郎! なんで追い返すんだ。客を大事にせい!」
「でもあの客ったら注文がうるさくて」
「馬鹿野郎! 通のお客さんじゃねえか。ああいうのが大事だろうが。おもてなしってのは可能性を拾うことだ。わかってねえな」
 コント劇団のお芝居に蛙はくすりともしなかった。

「これでよいケロ。
 不機嫌証書を持って天国へ跳ぶんだケロ」

「俺らと一緒にきなよ! 楽しもうぜ」
 ロケに誘うチューバーに、蛙は置物のように不動だった。

「羽毛布団被ったらテレビが見えなくなったぞ。
 本末転倒すってんころりん♪」
 ハットの男のライトなギャグには、まるで無反応だ。
 蛙は独りで歌い始めた。
 歌を聞いていると不思議と踊りたい気分になっていた。独りで踊ることはできても人前で踊るなんて馬鹿げている。そう思っていた僕の体は自然と舞っていたのだ。僕の優雅な踊りにつられたように人々が後に続き、気づくと輪になっていた。このようにして始まるのが盆踊りというものだ。けれども、これらは競技とは直接結びつかない余興の一種だった。

「回転寿司があんた一人の注文で大渋滞だぞ。
 本末転倒すってんころりん♪」
 滑ってもハットの男は堂々と立っていたが、蛙を笑わせることができない限り失格となった。

「これでよいケロ。
 現世は不愉快な吹き溜まり。
 不機嫌証書を持ってヘブンだケロ」

 芸人が去った後に、盤を持って棋士団がやってきた。とても笑いを届けに訪れたようには見えなかった。会場を間違えたのだろうか。目にも留まらぬ速さで駒が並べられると、振り駒もなく対局が始まった。戦型は居飛車対振り飛車の対抗形だ。

「中飛車というのはアグレッシブな戦法でっしゃろ。
 囲いはどうするだケロ?」
 蛙が盤上に食いついていた。観る将をしているようだ。
 中飛車の棋士は美濃囲いに構え、中央から歩をぶつけて動いていった。蛙の言う通り積極的な動きだ。居飛車が繰り出す銀に対抗して、中飛車の棋士も銀を中段に押し上げた。以下、細かい駆け引きが続く内に居飛車側が飛車先を突破し、振り飛車陣にと金ができた。周囲の者が真剣な眼差しで戦況を見守った。微笑んでいるのは、中飛車男だけだ。

「中飛車の左金は取らせて働きまっしゃろ。
 中飛車なりの働き方なんだケロ」
 間近で声がしてもそこは蛙の戯れ言。助言には当たらないことは周囲の者も理解していた。順調に攻め込んでいた居飛車の棋士の手が、不意に止まった。決め手を探しているのだろうか。

「棋理を大事にしてるんでっしゃろ。
 飛車がかわいいんでっしゃろ。
 決断を鈍らせるのは愛なんだケロ」

 居飛車の棋士は駒得を果たすとゆっくりとと金を活用し始めた。振り飛車男は、いつの間にか馬を作り、逃げ場を失った飛車を居飛車の銀と差し違えた。

「中央突破はピュアなんだケロ」

 居飛車の棋士の駒台に飛車が載った次の瞬間、振り飛車男の指先から放たれた桂はきらきらと輝いていた。
(ああ、なんて綺麗なんだ)
 それは天使の跳躍と呼ばれるさばきだった。

「ふふふ……」

 笑顔を取り戻した時、それはもう蛙の姿をしていなかった。

「王女さま!」

 破れた劇団員も、罵られた芸人も、周囲の皆が王女の帰還を祝福して歓声をあげた。もう将棋の内容なんてどうでもいいのだ。待ち望まれた者の復活の陰に隠れて、棋士たちの盤は駒音と共に地の底に沈んでいった。居飛車も中飛車も、人々の関心の届かない遙か遠くへと。
 再び拾い上げたのは、他ならぬ王だった。

「中飛車の男、いや中飛車の勇者よ。お前の働きによって王女は笑顔を取り戻した。さあ、何でも望むものを言うがよいぞ」

「いいえ、王様。私はただ好きな手を指しただけですから」

 望みは既に勇者の手の中にあるようだ。

「うーむ。参った!」

 王をも黙らせた男は、指先で過去を描き始めた。

「少し無理だったかな……」

 神の使いに違いなかった。

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闇の助言者

2023-05-11 20:15:00 | ナノノベル
「ねえあの人困ってるんじゃない」
 よからぬものが紛れ込んでいるこの部屋のセキュリティーはゆるゆるだった。

「何考えてるの?」
「ここで手が止まるって変じゃない?」
「手がないんじゃない?」
「明らかに変調だね」

 禁止されている助言とは違うけれど。やっぱり駄目だろう。本当のことを言ったら駄目な場面というものがある。小さな声だから許されると思っているのか。いいやささやきほど声は通るのだ。
 私は気分転換に席を離れた。指し手に窮していることは事実だった。多くを犠牲にした上で手に入るはずだった飛車を、上手く捕まえ切ることができない。この錯覚が致命的なものであっても不思議はない。

「いい手があるよ」
 帽子を深く被った男は廊下ですれ違いざまにささやいた。

「一万でどう?」

 部屋を出てもセキュリティーの甘さは変わっていない。いい手? あったとしてもそれはこの男の頭の中にではない。秘密の通信によって人知を超えた情報を持っているだけだろう。いい手かどうかは問題でなく、接触そのものが悪手になるのだ。私は一言も返さなかった。
 ハンカチで手を拭いて気持ちを落ち着かせる。錯覚のこと、飛車を手に入れることは忘れ、玉頭から攻め合いに出よう。やるだけやって、それでも駄目なら頭を下げるだけだ。

 席に戻ると相手の席に別人がかけていた。(席を間違えたか)私は何度も盤面を確認した。おかしい。やはり私の将棋に間違いない。

「不正行為が発覚しましてね」
 運営の男が言った。

 えっ? 何も。私は何もしていない。邪なものは近づいてきたけれど、私は少しも揺るがなかった。私は大いに取り乱し、存在もしない罪の言い訳を探しかけていた。

「相手の方がね」

「ああ……」

 間違えたのは相手の方か。
 冷や汗をかきながら、私は2回戦に駒を進めた。

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今日と明日のルーティン

2022-12-31 22:27:00 | ナノノベル
「お急ぎの方、お先にどうぞ!」

「お次の方、ちょっとお待ちください。只今、大急ぎの方がいらっしゃいました。大急ぎの方、お先にどうぞ!」

 この店は行列のできる大繁盛店。私はいつも列の後方に並んでおとなしく順番を待っている。どれだけ早く来て列に並んだところで、必ず自分の番が訪れるとは限らない。なぜなら、世の中には急いでいる人が多すぎるからだ。

「無茶苦茶お急ぎの方、真っ先にどうぞ! 少々お待ち。大至急の方がお見えになりました。大至急の方、お先にどうぞ!」

 私の番はなかなか巡ってこない。この列に大した意味なんかない。ただ少し有り難がって並んでいるようなものだ。
 昨日みた夢の話をしよう。

 私はゴールを決めたはずだが、異議を唱える者がいた。
「ちゃんと両手を使った?」
「使っただろ!」
 ボールを額にくっつけて押しつければゴールだ。ゴールに空間はなく、壁の真ん中がゴールに位置づけられていた。正しく両手を使っていればゴールだが、それが認められなければハンドの反則になるところが難しい。非常にわかりにくいルールだった。センターラインにはネットが張られ、パスは越えられるが、ドリブルする時には外を回らなければならなかった。


「お次の方、少々お待ちください。切羽詰まった方、お先にどうぞ!」

「えーと、あなたは……。多少お急ぎでしたか?」

「いいえ、特に。いつでも構いません」

「かしこまりました。そのままお待ちくださいませ」

 少しはずる賢さを身につけなければ、人の前に出るのは難しいのかもしれない。だけど、ここでそれを出すべきなのだろうか。急いでいないのは本当のことだ。後から来た者に追い越されてばかりの私は、ただの愚か者か。約束のない時間が私の前にどこまでも広がっているようだ。退屈から解き放つためには、自ら妄想の扉を開く以外にはないのだ。
 私はコインランドリーを開く。居心地がよく、誰でも駆け込めるような素敵な場所だ。子供は宿題を解き、猫は気兼ねなく暖を取る。城を追われた武将も、首を切られた落ち武者の幽霊も、平和を求めて駆けてくる。パズルに興じてもいいし、ダンスの振り付けをしてもいい。サラダを作ってもいいし、コーヒーを飲んでいるだけでもいい。勿論、洗濯なんてしなくてもいい。位置づけはコインランドリーだとしても。とにかくウェルカムな場所になればいい。
 夢には続きがあったように思う。
 宅配便を運んできたのはいつもの人だった。
「10箱になりますよ」
 どこか深刻な顔をしていた。若い衆が次々と庭に箱を運んでくる。中身は組み立て式の炬燵だった。真冬だというのに、男たちは全員上半身裸で作業していた。それだけ重労働だということだ。私は外に出て、箱が揃うのを立って見守っていた。自分だけ暖房の効いた部屋の中にいるのは、何かわるい気がしたからだ。風が冷たく、全身で冬を感じた。
「ここに置いてください」


「お次の方、ちょっとお待ちください。駆け込んで来られた方、生き急いでいらっしゃいますね。お先へどうぞ!」

「恐れ入ります。順番が前後します。我先にの方、前にお進みください!」

「わーっ! 俺もう後がないねん!」

「少々お待ち。後がないと言う方、真っ先にどうぞ!」


「恐れ入ります。本日は完売となりました! またのお越しをお待ちしております」

 やっぱり、今日も駄目だったか……。
 いつものように私は立ち尽くしたまま悲しい知らせを聞いた。
 楽しみはまたおあずけとなったが、それはまた明日を生きる理由ともなった。

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窓の女(ダイナミック・ウィンドウ)

2022-12-31 19:42:00 | ナノノベル
「すみません。ラッキーストライクください」
「ごめんよ。うちはうまい棒と消しゴムの店だよ。何味がいい?」
 ランドセルを背負った少年は何も買わずに帰っていった。

「はい、いらっしゃい」
 青年は酷く調子が悪そうだ。
「夕べから熱っぽくて……」
「食前に1錠、朝夕2回2週間分出しとくよお大事に」
 薬を受け取ると青年はせき込みながら帰って行った。

「いらっしゃい」
 次々と客が押し寄せる。この街の窓はここしかないのか。
 女は酷く寒そうで唇が紫がかっていた。
「大根と厚揚げと牛すじください」
「辛子はつけとくかい。ありがとうね」
 客によっては出せぬものはない。

「はい、いらっしゃい」
 窓の前にスーツケースが止まった。
「福岡まで大人1枚お願いします」
「ご旅行ですか。うまい棒共通クーポン付ねお気をつけて」

「いらっしゃい」
 次は帽子の紳士だ。
「ラークマイルド2トン」
「とりあえず今日はこれだけにして」
 紳士は箱を受け取るとすぐに封を開けて窓口で火をつけた。
「明日アマゾンから届きますよ。健康に注意してね」


 昨日は本当に忙しかった。
 今日は誰か来るだろうか。来るかもしれない。来ないかもしれない。すべて間に合っているのかもしれない。忘れられてしまったのかもしれない。
 昨日……。
 あれは本当に昨日のことだったろうか。
 それにしては自分は随分年を取ったとおばあさんは思う。
 人通りの絶えた道から目を離し手元のタブレットをのぞき込んだ。
「火星に生命体発見か」
 ニュースはまだ更新されていない。

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ライブ(真夜中の肉食獣) 

2022-12-31 05:27:00 | ナノノベル
 人の数だけ理想の形はあるのではないか。ある人は音楽などなくても何も困らない。だが、ある人はロックがなければ息もできない。ある人にがらくたであるものが、ある人には不可欠だ。しわわせとは、飢えを満たすことではないだろうか。俺の飢えは、あなたの飢えとは違う。俺は俺であなたはあなたであるということだろう。俺は真夜中の肉食獣。今夜も満たされる瞬間を求めて街をさまよっている。

「テクニカルチキンとトロピカルチーズバーガーとアンダルシアオレンジシェイクね」

「ご注文内容を繰り返します……。ただいま満席いただいております」

「そうなん?」

「お待ちいただけますでしょうか」

 飢えが満たされるまで、引き下がるわけにはいかない。待たされている間、ネットニュースからやらかし人たちの失言でも拾うとしよう。俺は失敗から学ぶ人間だ。他人の失敗を経験として取り入れ、自らの行動に生かすのだ。ページはなかなか開かない。止まってる? 障害か?
(読み込み失敗。ネット環境をお確かめください)

「恐れ入ります。ただいまWi-Fi調整中になります」

 店員の言葉に俺は完全に切れた。世の中、許せることと許せないことがある。怒りの炎が燃え上がると俺は誰にも止めることできない。

「はあ? 先言えやおばはん!」

「Wi-Fiなかったら意味ないやん。客を待たせた上にWi-Fiもないの?」

「申し訳ございません」

「俺は現代人やで。わかる? 金返して。500円キャッシュバックや」

「ご迷惑おかけして申し訳ございません」

「えっ? できへんの? なら200円でええわ。はあ? あかんの? お前現代人なめてんのか? ネットなかったら何したらええの? えっ? 教えて。教えてくれる?」

「お待たせいたしました。お席が空きましたので」

「どこや」

 胃袋が満たされれば穏やかな自分を取り戻すことができるだろう。俺は傷つきたくもないし、他人を傷つけたいわけでもないはずだった。真夜中の飢えが極まって、暴走のスイッチを押しただけ。本当にそれだけのことだった。

「お客さま、あと5分で閉店となりますがよろしいでしょうか?」

「はあ? 先言えや! てめえぶっころすぞ! 俺客やで。現代人やで。することいっぱいあんねん。5分で何ができんねん」

「恐れ入ります。お客様、ノーマスクの方は出禁となっております。よろしかったでしょうか?」

「バカかお前先言えや! そんだら俺、元々おったらあかんやんか。あかん奴やんか。何やこの店、席はない、Wi-Fiあかん、散々待たす、何も食われへんやん。俺どうしたらええの? 現代人に未来はあるんか?」

「恐れ入ります。なお、接客力の向上とスタッフの情報共有のため店内の模様はYouTubeにてライブ配信されております。ご了承くださいませ」

「えっ? なんて……。マジで? ここも?」

「こちらはアングル1となっております」


「わーっ。お姉さん先言ってくださいよ。ほんま悪いわー。ええ店ですやん。そりゃ流行るはずやわ。言ってくれたら僕もチャンネル登録しますやん。ほんま悪いわー。やめて後出しじゃいけん。めっちゃきれいですやん」

「申し訳ございません」

「いやお姉さん悪くないです。こちらこそですやん。僕、顔晒してますやん。気持ちだけ、ごちそうさま! 店員さん、お疲れさまでした!」

「ありがとうございました!」

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スープ・カレーを召し上がれ

2022-12-31 00:11:00 | ナノノベル
「誠に申し訳ございません。ご注文いただきましたスープ・カレーでございますが、私の不注意により少々スープをあふれさせてしまいました。お届けできる状態でないと判断できるため、ご注文をキャンセルさせていただき、こちらの方で引き取らせていただきます。この度は誠に申し訳ございませんでした」

「大丈夫です。構いませんのでそのまま届けてください!」

「恐れ入ります。せっかくご注文していただいた商品を、完全な形でお届けできずに心苦しく思います。やはり、こちらで引き取らせていただくことといたします。この度は誠に申し訳ございませんでした」

「いえいえ。そう気になさらなくても大丈夫ですよ。私の方は全然構いませんので、どうかそのまま届けてください!」

「いえいえ。そういうわけには参りません。私どもの仕事は、ご注文いただいた料理をできあがった時の状態そのままに、完全な状態でお届けすることです。この度は私の不手際によりまして、多少なりともスープをあふれさせてしまったこと、誠に痛恨の極みでございます。心よりお詫び申し上げます。つきましては、この度の注文はキャンセルとさせていただき、スープ・カレーを私の方で引き取らせていただきます」

「業務に対する真摯な姿勢に心打たれました。人間誰しもミスはあるものです。完全を心がけていても、そうならないことも多くあるのではないでしょうか。多少のことは気にしませんので、そちらもそのようにお考えください。どうかそのままお届けください!」

「この度は私の一方的なミスにも関わらず、親切な心遣いをいただき誠に恐れ入ります。しかしながら、一度あふれさせてしまったスープは二度と元に戻ることはございません。お客様の寛大な心を深く胸に刻み、今後はより一層の注意を払って業務に当たることといたします。その上で、ご注文いただきましたスープ・カレーは私の方で処理させていただきます。この度は誠に申し訳ありませんでした」

「少しくらい大丈夫です。本当に大丈夫ですから、そのまま持ってきてください。待ってます!」

「少しではありませんでした。最初は少しと思いましたが、お客様から見ればとても少しではないと思われます。このような状態では、もはやお届けすることができなくなりました。深く謝罪の意を示すとともに、商品はこちらで引き取らせていただくことといたします」

「反省はもう十分なので届けてもらえます? 私が大丈夫と言ってるのだから、大丈夫ですよ。本当に」

「お怒りはごもっともでございます。振り返ってみれば、お昼からまともな食事も取れていなかったこともあって、多少ハンドリングが雑になっておりました。また、近道をしようとあえて凸凹道を選択してしまったことも大きな判断ミスでした。ですが、これらはすべて私事であって言い訳にすぎません。すべては私の不徳の致すところでございます。改めて謝罪させていただきたいと思います。つきましては、ご注文いただきましたカレー・スープは不完全な状態となりましたので、私の方で責任を持って処理させていただきます」

「お忙しかったのですね。お疲れさまです。反省の気持ちはもう十分いただきました。スープがなくなっていても不完全であっても構いません。どうぞそのまま届けてください! そのままで」

「労いの言葉までかけていただき恐れ入ります。この度は、私の不注意によりお客様に多大なご迷惑をおかけしたことを、心よりお詫び申し上げます。また、それによりお客様に貴重な時間をお取りいただいたことも、重ねてお詫び申し上げねばなりません。さて、夜も深まるとともに冷え込みの方も一段と厳しさを増してきました。この辺りでお客様にはご納得していただき、チャットを閉じさせていただきたいと思います。つきましては、誠に勝手ながらご注文いただきましたスープ・カレーについては、私の方で責任を持って処理させていただきます」

「もしかしてお腹空いていますか? もうスープ・カレーを食べるモードになっているのでは? それならそれでこちらも納得します」

「空いてないと言えば、それはうそになってしまいます。しかしながら、それと私の責任の行方、及び対処の仕方とは、完全に切り離されたものとして考えます。どうかご明察くださいませ」

「いいです、いいです。お譲りします。もう何か別の物を食べたくなってきましたから。どうぞご自由に」

「ご理解いただき誠にありがとうございます! 今後ともフード・ポンタをよろしくお願い申しあげます!」

「はい、わかりました。どうぞ召し上がってください!」


「いただきまーす!」

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ロング・ファイト(2000ラウンド)

2022-12-30 20:58:00 | ナノノベル
 ノックアウトの予感を越えて、私は50ラウンドのリングに立っている。激しいパンチを交えながら、試合の中でさえも成長する。私は自分ののびしろに驚かされる。そんな私を前にガードを固め、フットワークを駆使しながら向かってくる相手も大したものだ。倒れない限り、ファイトは続く。ゴングとゴングの間に注がれるお湯。一息つく間、私は青コーナーでたぬきを食べた。ちょうどいい補給。そして、また立ち上がる。

 眠っているのか。100ラウンド辺りの私は半分夢の中にいるようだった。ダメージはかなり蓄積されている。時に相手のパンチがスローモーションのように見える。私は余裕で避けてカウンターを繰り出す。しかし、ダメージは与えられない。時は巡り、相手は赤コーナーできつねを食べている。向こうの方も美味そうだ。七味を注ぐ余裕も見えた。

 魔の時間帯を越えた。150ラウンドにさしかかるとパンチの質に明らかな変化が見てとれた。もう風を切るような鋭さはない。私たちのパンチは、互いに傷つけ合うことはなく、むしろ励まし合っていた。よくやったね。よくきたね。痛くないね。何ともないね。鈍くなったね。流石にね。もういいね。あと少しね。

 まだまだやれる。180ラウンドに入って少し手数は減ったものの、足腰に限界は見えなかった。それでも、私たちはもう決めていた。
 軽くグローブを合わせると次の瞬間、審判に話を持ちかけた。

「少し休みたい」
 先は長い。決着をつけるのは今ではないと共感したのだ。

「これより冬休みに入ります!」
 審判の宣言に客席からは盛大な拍手が沸き起こり、いつまでも終わりなく続いた。
 再開のゴングは今から3週間後だ。

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プライド旋回

2022-12-30 19:29:00 | ナノノベル
「リクエストを申請して着陸許可を待て」
「こちら機長。飯の友は辛子明太子。リクエストが通り次第着陸態勢に入る」
 551機の機長は迷わず晩ご飯の飯の友申請を終えた。既に空腹のピークを過ぎて半ば痛いほどだった。しかし、フライトは最後の最後まで気を抜くことが許されない。それは誰よりも機長自身が知っておかねばならぬことだった。

「こちら管制塔。申請中の辛子明太子は売り切れ。繰り返す。辛子明太子は売り切れ。リクエストを却下する。至急代案を立て再度申請せよ」
 機長は操縦桿を持ったまま顔をしかめた。

「却下は認められない。飯の友は辛子明太子。代案はない。以上」
「こちら管制塔。状況を報告せよ。こちら申請待ち」
「こちら機長。既に申請済み。対処願う。以上」
「こちら管制塔。辛子明太子は現在売り切れ。繰り返す。辛子明太子は現在売り切れ。代案リクエストを検討せよ」
「こちら機長。飯の友は辛子明太子。リクエストが通り次第着陸態勢に入る。繰り返す。飯の友は辛子明太子。入手ルートの開拓を検討せよ」
 緊張のやりとりが続く。互いの主張は平行線のままだ。速やかな解決が求められる。

「こちら管制塔。飯の友に関してコントロールできる範囲で緊急提案がまとまった。以下の提案を検討せよ。明石海苔、紀州梅干、シーチキンファンシー等を取り揃えて機長の飯の友とする。速やかに提案を快諾して着陸態勢に入れ」
「こちら機長。飯の友は辛子明太子。リクエストが通り次第着陸態勢に入る。繰り返す。飯の友は辛子明太子。それ以外の提案は受け付けない。以上」
 機長の断固とした態度。そこにあるのは20時間分もの思い。操縦桿を握り重大な責任を果たす者としてのプライドがあった。それは常人には理解されないであろう高い高いプライドだ。

「こちら管制塔。明石海苔、紀州梅干、シーチキンファンシー他を取り揃えた飯の友の配置が完了した。機長の柔軟な思考と名誉ある決断を願う」


「ご案内申し上げます。ただいまエンジン系統のトラブルにより当機は着陸を見合わせております。お急ぎのところ誠に恐れ入ります」

「機長! 乗客がざわつき始めています。これ以上は無理では……」

「くそーっ! 下界の奴らめ! 私の空腹も限界だぞ」

「こちら管制塔。応答せよ。551便応答せよ」

「こちら機長。リクエストを繰り返す。飯の友は辛子明太子。リクエストを繰り返す。飯の友は辛子明太子……」

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VARスタジアム

2022-12-29 03:02:00 | ナノノベル
 塁審の旗が上がっています。
 1イニングに投げられる変化球の数を超えたかですね。
 非常に微妙なところでした。
 主審がVARのジェスチャーに入ります。

 オールドファッションだ。

 ドーナツのアングルからリプレイを注視しています。
 映像を見てみましょう。
 これは……。未知の変化球。

 自然界には存在しない曲がりだ!

 ストライクの判定が覆ります。
 アウトになった選手たちが、地下鉄の階段を引き返してきます。コツコツと響く足音が、リベンジに燃えながら上がってきます。
 おっとこれは判定に納得がいかないか。
 グラブをマウンドに叩きつけるとパンドラの箱が開いた。
 これはまずいぞ。

 駆けつけた警備隊が反逆者をマウンドから引きずり下ろそうとします。それを阻止すべく集まってきた、選手、スタッフ、応援団。更に空からは風船に乗って謎の援軍も合流しました。
 場内はさながらお祭り騒ぎとなっています。

 スタジアム・ロックダウン!

 ただいま球場に緊急事態が宣言されました。
 もはや我々もお手上げです。
 さようなら。
 命があったらまたお会いしましょう。 

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サポート・メンバー(盤外戦術)

2022-12-27 02:56:00 | ナノノベル
 どんなアウェーでもホームに作り替えることはできる。そのために周到な準備をして、多くの物を持ち込む。座布団の周りの手の届く所に私は慎重にそれを配置する。懐中時計、ハンカチ、扇子、メモ帳、鉛筆、水筒、消しゴム、クランキー、カロリーメイト、コーヒーカップ、エコバッグ。その1つ1つが私の味方である。
 対局室の空気が厳しいアウェーだとしても、視野を狭くして盤上に集中することができれば、ここは見慣れた風景。自分の部屋に近い場所と思い込むこともできる。

 温めていた新構想が全く通用しない。今までの相手とは次元が異なっているように思える。一手一手に一切の妥協なき強い意志のようなものが感じられる。逆にこちらの手は、遙か先まで見透かされているように思えるのだ。(手合い違い)自身の脳内で聞きたくもない言葉が生成される。ここに来るのはまだ早かったか……。

「場違いじゃないよ」
 懐中時計がそっとささやくのが聞こえた。
「浮いてないよ」
 ハンカチが助言をくれる。
「独りじゃないよ」
 消しゴムが転げながらつぶやいた。
 不安に押しつぶされそうだった私を、つれてきたものたちが口々に優しい言葉で勇気づけてくれる。
 彼らはただの物ではない。
 1つ1つが私にとって強力なサポート・メンバーなのだ。

「自分の力を出せれば勝てるよ!」
 エコバッグが大きな口を開けて言った。
 そうだ。
 ここまで来れた私がまるで通用しないはずはない。
 過剰な畏怖を紙屑と共にゴミ箱に捨て、私はクランキーを丸呑みした。

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