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アウェー・ゲームは旅から始まる。バスに揺られながら俺たちは決戦に向けてそれぞれに気持ちを高くコントロールしていく。音楽、映画、ゲーム(あいつゲームの中でもサッカーしてるよ)、読書。座席での過ごし方にはそれぞれの個性が現れる。目を閉じて静かに夢見るミッドフィルダーもいる。何をしようとも長時間同じ姿勢を続けることはコンディションに悪影響を与える。気分転換を兼ねてバスは途中休憩に入る。
道の駅での楽しみはつまみ食いだ。お菓子、ソフトクリーム、たこ焼き、団子、お煎餅……。様々な誘惑が手招いている。中でも中華そば! これにはかなわない。ご当地の味が俺の舌を魅了する。それにはゲン担ぎの意味もあった。麺のような腰の強いフィジカルを保てますように。スープのような濃密な選手生活を送れますように。ふぁー、やっぱり旨かねー! 小腹を満たすと幸せなリフレッシュが完了する。憂いなし! 俺たちはゆっくりと駐車場を歩いて選手バスへと向かった。バスには既に別の人間が乗り込み満席だった。戻るバスを間違えたわけではなかった。
「監督、これはいったいどういうわけです?」
誰なんだこいつらは。どこの子や?
「すまん。新陳代謝だ」
(これしかなかったんだ)
監督の目の奥に哀しみが滲んで見えた。憐れみなどではない。勝利を希求する者が未来を見つめている目だった。だから俺は何も文句を言えなかった。
結論は既に出ていた。俺たちの戻る場所はどこにもなかった。バスは、一瞬の停止で世代交代を終えたようだ。
「なんて手際だ!」
窓の向こうに見えるギラギラした瞳。確かに、あの光こそ今の俺たちが忘れてしまったものかもしれないな。一息で扉は閉まり、新旧の世界を隔てた。敵地に向けてバスは走り出す。俺たちはまだそれを応援するという立場にはなれなかった。
「じゃあ、もう一軒まわるか!」
「おーっ!」
ただ旨いものを追い求めて俺たちの旅は続く。
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