思わぬところで敵の歩が突っかかってきた。このタイミングなのか……。それは読みにない手だった。素直に取るべきか。(取るにしても同歩か、同銀か)歩で取るのは自然だが、後の継ぎ歩は何よりも恐ろしい。銀で取るとコビンが開き気持ちが悪い。ここは手抜いて攻め合いか。(玉頭の歩を手抜く。私は正気だろうか?)
それにしても応手が多すぎる。たくさん手があって正解が一つという時、人間は誤りやすい。(当然のことだろう)直感だけを頼ることはできない。読みの精度にも限界がある。だけど、少しでも最善に近づいていきたい。勝つこと(強くなること)を信じて読み耽る。それが私の本文だ。
「佐々木先生、残り3時間です」
ああ、もう残り半分になった。
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8筋の悩ましき歩をみつめては
過ぎ行く時は
金なり
(折句「ハナミズキ」短歌)