眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ネズミの商店街

2025-02-09 21:20:00 | 眠れない夜に
 うとうとしかけると決まってネズミが出た。尻尾をつかもとすると手をすりぬけてしまう。もう許せない。頼りの猫はいない。ネズミを追って夜の街に出た。信号を無視して急行するパトカーが追っているのは、どんな凶悪犯だろう。ネズミは足跡を残しながら夜を通過する。商店街。自転車屋さん、花屋さん、パン屋さん、寿司屋さん。それぞれ深夜営業には求められる価値があるから。ネズミは寄り道もせずに寿司屋さんに駆け込んだ。
「ネズミを追って来ました」
「こんな顔ですかい?」
 振り返った男は、ネズミそのものだった。
「そいつはこんな顔でしたかい?」
 どいつもこいつもこういうことか。常連客を取り仕切っているのは、もはやネズミそのものなのだ。まな板の上に輝くあれは? 何でもいい。それより包丁を持つあれの方が問題だろう。
「お客さん、枕はいるかい?」
 ああ、ここはもうやばそうだ。


コメント
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