侍は卒業したけどまだ刀を捨てることができない。持っているだけで強いのでは、強くなれるのでは、強くあることができるのでは。最もよかった頃の自分を保てるのでは。
ネズミ年の御守りが捨てられない。そこに魂が宿っているかもしれない。ネズミのご先祖様からお叱りを受けるかもしれない。夜中にネズミが化けて出るかもしれない。
(イフイフイフイフイフイフイフイフイフ)
いくつものイフが押し寄せてくると捨てることはできなくなる。
決闘は終わったけど、二丁拳銃が捨てられない。突然、背後から襲ってくるかもしれない。約束はうそかもしれない。終わりは始まりかもしれない。高架下で侍に挟まれるかもしれない。ならず者が暗躍するかもしれない。治安が急激に悪化するかもしれない。
誰に借りたかわからない穴の開いた傘が捨てられない。返さないことをずっと根に持っているかもしれない。思い入れの深い傘かもしれない。いざという時に、傘が1つもないかもしれない。すべての傘屋がなくなってしまうかもしれない。大傘不足時代がやってくるかもしれない。穴の向こうに救世主が見えるかもしれない。
子供の頃に遊んだ玩具が捨てられない。ある日突然、思い出がよみがえるのでは。何かの理由で必要になるのでは。忘れている価値が復活するのでは。
もしもそれを捨ててしまったら……。捨ててしまった「あの時」のことが、生きている限り悔やまれるかもしれない。捨てたことを悔いながら日々を生きなければならないのかもしれない。
(イフイフイフイフイフイフイフイフイフ)
イフある限り誰とも離れられないマイライフ。
「こんばんはNHKです」
「間に合ってます」
「突撃ゴミ屋敷拝見で参りました!」
「ならうちじゃないね」
お隣さんかな。
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