眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

決意の入店

2020-09-15 07:38:00 | 幻日記
 お店に入るのは怖い。どんな見過ごされ方をするのか、どんな案内をされるのか、どんな混雑があるのか。まだ見ぬ店の中は怖いことばかりだ。未知の店に入るくらいなら、透明なコンビニにでも立ち寄ってサンミーをテイクアウトすることも考えられる。その夜、病院からの帰り道、店の階段を上った。(もう決めてあった)お店に入れない弱点を突かれる日が訪れることを恐れたからだ。

 扉を開けると誰もいない。タッチパネルがいきなり大きな声を出した。人数を入力するとカウンターでよろしいですねとメッセージが出た。それ以外に選ぶことはできない。42番の紙切れを持って次の扉を開けた。案内板に従って奥へ進む。途中2人の従業員とすれ違った。
 42番のカウンター席をみつけて椅子を引いた。タッチパネルを見上げていると首が疲れた。画面の端に別の注文方法が載っていた。アプリを起動し規約に同意するとスマホをタッチパネルにかざしQRコードを読み取った。
「ほー、できました?」
 パーティションを越えて声がした。
「あー、はい」
 最初に言葉を交わしたのは隣の客とだった。

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