
振り返る余裕もなく歴史の本が没収された。教科書、小説、マンガ、新書、note……。不要不急の学習はすべて悪と改められた。
「今することですか?」(何に必要ですか)
必要としつこく言ってきたのは誰だったのか。
「今は徹底待機です」
ドアを突き破って狼が乱入してきた。4人1組になって防御の陣を敷く。訓練通りだ。ターゲットを定めることができず、獣は右往左往する。続いて笛を吹いて不快なメロディーを奏でる。狼は耳栓を探して机の間を縫うように走り回る。見つけることができたのは、先の丸まった小さな消しゴムだけだ。追い込まれて狼は教室を飛び出した。次に向かう先は校庭のようだった。
「狼が行ったよ!」
犬よりも凶暴な部外者の乱入によってフォーメーションは崩された。そこには心を挫くような不快なメロディーも存在しない。狼は憎しみに目を輝かせながら、少年たちを追いかけ回した。笛が鳴るまではグランドの外に出ることはできない。それはレギュラー選手に染み着いた本能のようなものだった。
秩序の崩壊した世界の上で10番だけは恐れを知らず、ボールを保持したまま狼の前に立った。その時、狼は何も奪うことなく足を止めて伏せの姿勢を取った。
「みんな集まって! 彼はフットボールを見に来ただけなんだ」
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