昔々、案外なところにおじいさんとおばあさんがいました。こんなところにはおられんわい。そう言っておじいさんは山に芝刈りに行きました。何かと理由をつけては芝刈りに行くおじいさんでした。ずっと二人ではいられないわね。おばあさんはそう言って川に洗濯に行きました。それは尤もな理由でした。
川に着いてからおばあさんは、大事なものを忘れてきたことに気がつきました。今この瞬間に、世界で一番大事なものと言えるのは何か。それは洗濯板でした! いったいこの世界で洗濯板以上に大事なものと言えるものがあったでしょうか。(今という時間に限って言えば)
どんぶらこ♪
どんぶらこ♪
その時でした。上流から洗濯板に桃が乗ってやってきたのです。
「これは幸いだ!」
おばあさんは、心の底から天に感謝しました。桃船長を脇に置いて休ませると、おばあさんは洗濯板を手に取って早速洗濯に励みました。もしもこのような僥倖に恵まれなければ、家にまで戻らなければならなかったでしょう。
「ちょっと待っててね」
おばあさんはささやくように言いました。桃船長は大人しくおばあさんの仕事を見守っていました。
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