眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

両替タヌキ

2019-11-11 02:50:00 | 夢追い
「5千円お預かりします」
 ん?
 何か妙な間があった。
 見つめれば1万円札だ。
 失礼しました。
「1万円お預かりします」
 客はいえいえという笑顔だった。
 1、2、3……。そして10枚の千円札を手渡した。
 それは見慣れないタイプ。少し前に出てあまり世間に流通しなかった1万円札に違いない。よく見ると札の端が5ミリばかり破れていた。念のためにそれを手にして事務所に持ち込んだ。支配人がいた。

「これ。少し破れてますけど……」
 ん?
 何か妙だった。
 見つめるとそれは玩具のようだった。
 しまった! やられた!
 あっ。あれだ。出てきます。

「ちょっと、これ!」
 客は偽物であると素直に認めた。
 返して!
「返す返す」
 男は小さな声で言った。(あとで返す)
 今すぐに!
「返す返す」
 ささやきながら、男は徐々に縮小していった。

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