いつかのやさしいものに似ていたら、やさしい衣を着せてしまう。ファースト・コンタクトであっても、完全な素でそのものを受け取ることはできないのだ。鳥に似ていたら勝手に翼を着せて見てしまう。馬に似ていたら勝手にスタミナを着せて見てしまう。蛙に似ていたら勝手に歌声を着せて見てしまう。時には偏り、また時には都合よく着せてしまうのが脳というものだ。好きだったものに似ていたら、無意識にハートを着せてしまう。
サッサッサッサッサッサッ♪
少し近づこうとしただけで犬は離れて行ってしまう。
「おいで。大丈夫だよ」(話したいだけ)
サッサッサッサッサッサッ♪
「最初の宇宙人がよほど酷かったのだろう」
「隊長、どうしますか」
サッサッサッサッサッサッ♪
その逃げ足には恐怖が染み着いているのが見えた。
「我々は誰かの残像にすぎぬ」
「無理ですかね」
「いや。粘り強く見せていこう……」
「はい!」
記憶は脱げない。重ねて着せていくことしかできない。
「人としての誠意を」
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