最後の一口を楽しみにしていた。それは希望そのものだった。つまりは力の源ということだ。おじいさんはお椀に顔を寄せた。そして、豚汁の中に残った最後の一切れの豚肉を、箸でつまんだ。その瞬間、おじいさんは受け入れ難い現実に直面した。そうだ。すべてはおじいさんの夢だった。耐え難い裏切りにおじいさんは我を忘れてしまうほどだった。
「こりゃ玉葱じゃないかーい!」
叫びながらおじいさんはちゃぶ台をひっくり返した。希望が大きかっただけに、自らをコントロールできなくなっていたのだ。何事かと周囲の人々がかけつけた。それ以来、おじいさんは大層危険だとされ、国家機関の厳しい監視の目が向けられることになった。
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