「家」 @ 鎌倉七里ガ浜 + 時々八ヶ岳

湘南七里ガ浜(七里ヶ浜とも)から発信。自分の生活をダラダラと書きとめるブログ。食べ物、飲み物、犬の話題が多い。

紅茶を普通に飲む(1) ジョージ・オーウェル

2009-06-24 14:51:48 | 食べ物・飲み物
日本で紅茶を飲む人の数は20年前と比べれば格段に増えていると思われる。その最大の原因は20年ほど前から始まった日本での英国ブームではないか。英国礼讃本及びその英国礼讃者を批判する本の出版部数の増加と、日本の紅茶愛飲家の増加は、少なくとも時期はほぼ一致する。

ところが本家の英国では紅茶を飲む機会は明らかに減っていて、他方でスターバックスの店舗がずいぶんと増えた。皮肉なものである。日本人など比較にならないほど保守的と思える英国人だが、スタバの受け入れに関してはイタリア人よりはるかに寛容なようだ。



紅茶通の方々ならたいていよく知っていることだが、作家のジョージ・オーウェルが「一杯のおいしい紅茶(A Nice Cup of Tea)」という随筆を残していて、そこには彼の「どうしてもゆずれない11項目」というものが書かれている。その内のいくつかの項目を拾うと以下のようなものがある。
●インド産かセイロン産の葉を使用することが肝心
●紅茶は濃いことが肝心
●円筒形のカップを使い、浅くて平たい形のは使わない
●紅茶を先に注ぐ、ミルクは後

ジョージ・オーウェルは面白い作家だ。学生時代に彼の「動物農場」をテキストとして読まされた人も多いはずである。寓話仕立てで恐ろしさに寒気する社会体制批判だが、そのまま表面的に読んでもおかしなストーリーである。そしてこの紅茶に関する随筆も、紅茶をおいしく淹れる条件を生真面目に語っていて面白い。文章自体はものすごく短いものである。このブログの記事のタイトル「紅茶を普通に飲む」は、私個人の日常生活における私好みの紅茶の飲み方を指すが、それを前提にすれば、私は上記の4項目のうち最後のものを除きすべてについてジョージ・オーウェルに同意する。

4番目の項目「紅茶が先か、ミルクが先か」という問題はそれぞれのやり方に長所と短所があるから、単純には結論づけ出来ない。しかしオーウェルは自分の随筆に「おいしい紅茶」というタイトルを与えているわけだから、それからするとオーウェルの「紅茶が先でミルクは後」とした主張は、今では受け入れられにくいだろう。というのも、すでに回答が出てしまっているのだ。「どちらが先」論争に対しては、英国王立化学協会によるプレスリリース(http://www.rsc.org/pdf/pressoffice/2003/tea.pdf)に結論が見られる。オーウェルの「一杯のおいしい紅茶」に対し、こちらのタイトルは「一杯の完璧な紅茶の作り方(How to make a perfect cup of tea)」である。このプレスリリースにはオーウェルへの言及もあるが、化学的な説明を加えて「ミルクが先」と明確に書いてある。これもまた紅茶好きな人ならよく知る見解であろう。



オーウェル以前からあり、オーウェルが随筆に「紅茶が先」と書いた問題も、さらにその随筆から半世紀以上が経って決着を見た。オーウェルはこれ以外にもいろいろな随筆を残している。それらをまとめたのが平凡社ライブラリーの「ライオンと一角獣」である。残念ながら今は古書で手に入れるしかない。私もそうした。
コメント (6)
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