熱心なファンも多いが、反感を持つ人も多いらしい林望氏。彼の著書を再読した。彼は住宅に関心が強い。この本以外にも、書斎作りについて本を書いているし、エッセイにもたびたび独自の住宅論を書いている。林氏のこの本における主張のいくつかは大変ユニークである。それらと我が家の特徴との間に共通点もあるし、違うところもある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/c1/7bc330885d9b61b17c41de49322ae191.jpg)
ファンという感じではないが、私は彼の書いたものを読むのが好きである。常識も疑い独自の意見を持ち、それを書く。こういう人は妙に好かれたり、嫌われたりする。
例えば、こんなこと(↓)もはっきりと書く。だから読者の反発を買う。たしかに日本以外の経済先進国の都市及びその郊外では法律あるいはマナーの問題として、洗濯物をあからさまに外に干すのは適当でない場合が多く、あまり見かけない光景ではある。また高層住宅でベランダの桟にふとんをかけたりするのは、外見の問題を通り越して危険ですらある。自分は「大丈夫」と思っていても、何が起こるかわからない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/02/2b4a6ecf84eb55b81f9f653a33ce13e8.jpg)
「玄関は暗く」。玄関に日が差すような作りにしても、意味がないと。暑いだけだと。私もそう思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/e2/224935c0358ee78ea7b0d7b6bdad1302.jpg)
我が家の玄関は暗い。しかし玄関に限らず、平均的なお宅に比べれば、我が家の中はどこも暗いが・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/7f/8194e34805f181a65134bc77d20a53e2.jpg)
たまに林氏は自分の過去の失敗を白状する。この本で氏が認めた自身の失敗とは、氏の自宅の階段の幅が氏の基準からすると狭かったことらしい。設計初期の段階で、半間(90cm)のマス目の上にラフな設計図を起こす日本の昔ながらの方法が採られたのであろう。階段の有効幅(芯・芯ではなく、左右の内壁の距離)が80cmほどらしい。これは日本では普通のサイズだ。しかし確かに大きなモノを動かしたりするには、この幅で、かつ途中で折れ曲がる階段は不便である。
このあたりは、以前このブログの記事 階段や廊下の幅の確保@七里ガ浜自宅 で、私も書いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/4f/8668e438f80762dbd98abd9efa022aad.jpg)
私が全面的に同意するのはこの点か。何度も書いたけれど、この日本人の「南信仰」が郊外の住宅街の景観をつまらなくしている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/ae/f8c812069510c7905d25fb539b073490.jpg)
下の写真は英国の典型的郊外。
敷地が面する道路の方角にかかわらず、どこの家も、道路から一定の距離を置いて並び、かつ、道路を向いてデザインされた家並み。道路から見た時、どこを見ても美しい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/88/6836ba66b1da7317c1964a732fae9585.jpg)
<Source: Google>
下の写真は日本の典型的新興住宅街。
敷地が面する道路の方角にかかわらず、どこの家も、小さな敷地で目一杯南側を開け、建物を北側に寄せて建てられる家並み。北道路の風景はつまらない。そこは敷地に余裕がなさすぎる場合が多く、家の北側のデザインもややなおざり。小さく不規則な窓が不規則な高さに並ぶ。水回り(風呂、洗面、トイレ、台所)及び階段の踊り場等、小さな明かりとりの窓である。湯沸かし器の設備などが道路を向いて設置されるケースも多い。つまり日本の郊外では、北道路の敷地に建つ家は背中を向いていて、東・西道路の敷地に建つ家はそっぽを向いて(90度横を向いて)建てられることが多い。これが現代の日本の建築のルールなのである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/35/97421799c8e39a581e2ba98a3ad1607e.jpg)
<Source: Google>
この日本人の「南至上主義」を、林氏及び多くの建築家は、農家の発想の名残とする。確かにそういうところがあるらしい。
しかし一方で、日本の都市郊外の住宅地開発史を研究した本によると、そうなってしまったのはここ100年弱の間のことのようだ。住宅の基本となった江戸時代の武家屋敷を調べると、規模を問わずいずれも、方角とは無関係にそれが接した道路に向かって開かれたデザインで作られており、例えば「北道路だから」と閉じたデザインに作られることはなかったらしい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/23/f96bbcc5bbe21fbccbc7144a08242d48.jpg)
北道路の敷地を持つ林氏は、自宅をなんと南に寄せ、周囲の家とは逆のことをやったらしい。このメリットは数多い。その合理性に感激する。しかし問題は通りの家並みがそのお宅だけ狂い、非常に不規則になることだ。私なら、自分が「合理的だ」と思ったとしても、それが周囲の景観のリズムを乱すことになると思うと実行するのをためらってしまう。
この本はとても面白い。建築を職業としない、かつ海外の事情に詳しい人の書いたユニークな住宅論だ。ただし反感を買うこと必至である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/c1/7bc330885d9b61b17c41de49322ae191.jpg)
ファンという感じではないが、私は彼の書いたものを読むのが好きである。常識も疑い独自の意見を持ち、それを書く。こういう人は妙に好かれたり、嫌われたりする。
例えば、こんなこと(↓)もはっきりと書く。だから読者の反発を買う。たしかに日本以外の経済先進国の都市及びその郊外では法律あるいはマナーの問題として、洗濯物をあからさまに外に干すのは適当でない場合が多く、あまり見かけない光景ではある。また高層住宅でベランダの桟にふとんをかけたりするのは、外見の問題を通り越して危険ですらある。自分は「大丈夫」と思っていても、何が起こるかわからない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/02/2b4a6ecf84eb55b81f9f653a33ce13e8.jpg)
「玄関は暗く」。玄関に日が差すような作りにしても、意味がないと。暑いだけだと。私もそう思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/e2/224935c0358ee78ea7b0d7b6bdad1302.jpg)
我が家の玄関は暗い。しかし玄関に限らず、平均的なお宅に比べれば、我が家の中はどこも暗いが・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/7f/8194e34805f181a65134bc77d20a53e2.jpg)
たまに林氏は自分の過去の失敗を白状する。この本で氏が認めた自身の失敗とは、氏の自宅の階段の幅が氏の基準からすると狭かったことらしい。設計初期の段階で、半間(90cm)のマス目の上にラフな設計図を起こす日本の昔ながらの方法が採られたのであろう。階段の有効幅(芯・芯ではなく、左右の内壁の距離)が80cmほどらしい。これは日本では普通のサイズだ。しかし確かに大きなモノを動かしたりするには、この幅で、かつ途中で折れ曲がる階段は不便である。
このあたりは、以前このブログの記事 階段や廊下の幅の確保@七里ガ浜自宅 で、私も書いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/4f/8668e438f80762dbd98abd9efa022aad.jpg)
私が全面的に同意するのはこの点か。何度も書いたけれど、この日本人の「南信仰」が郊外の住宅街の景観をつまらなくしている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/ae/f8c812069510c7905d25fb539b073490.jpg)
下の写真は英国の典型的郊外。
敷地が面する道路の方角にかかわらず、どこの家も、道路から一定の距離を置いて並び、かつ、道路を向いてデザインされた家並み。道路から見た時、どこを見ても美しい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/88/6836ba66b1da7317c1964a732fae9585.jpg)
<Source: Google>
下の写真は日本の典型的新興住宅街。
敷地が面する道路の方角にかかわらず、どこの家も、小さな敷地で目一杯南側を開け、建物を北側に寄せて建てられる家並み。北道路の風景はつまらない。そこは敷地に余裕がなさすぎる場合が多く、家の北側のデザインもややなおざり。小さく不規則な窓が不規則な高さに並ぶ。水回り(風呂、洗面、トイレ、台所)及び階段の踊り場等、小さな明かりとりの窓である。湯沸かし器の設備などが道路を向いて設置されるケースも多い。つまり日本の郊外では、北道路の敷地に建つ家は背中を向いていて、東・西道路の敷地に建つ家はそっぽを向いて(90度横を向いて)建てられることが多い。これが現代の日本の建築のルールなのである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/35/97421799c8e39a581e2ba98a3ad1607e.jpg)
<Source: Google>
この日本人の「南至上主義」を、林氏及び多くの建築家は、農家の発想の名残とする。確かにそういうところがあるらしい。
しかし一方で、日本の都市郊外の住宅地開発史を研究した本によると、そうなってしまったのはここ100年弱の間のことのようだ。住宅の基本となった江戸時代の武家屋敷を調べると、規模を問わずいずれも、方角とは無関係にそれが接した道路に向かって開かれたデザインで作られており、例えば「北道路だから」と閉じたデザインに作られることはなかったらしい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/23/f96bbcc5bbe21fbccbc7144a08242d48.jpg)
北道路の敷地を持つ林氏は、自宅をなんと南に寄せ、周囲の家とは逆のことをやったらしい。このメリットは数多い。その合理性に感激する。しかし問題は通りの家並みがそのお宅だけ狂い、非常に不規則になることだ。私なら、自分が「合理的だ」と思ったとしても、それが周囲の景観のリズムを乱すことになると思うと実行するのをためらってしまう。
この本はとても面白い。建築を職業としない、かつ海外の事情に詳しい人の書いたユニークな住宅論だ。ただし反感を買うこと必至である。