碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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84歳の現役作家・江川晴さんから元気をいただく

2008年07月02日 | 本・新聞・雑誌・活字
江川晴さんが、『小児病棟』で第1回読売「女性ヒューマン・ドキュメンタリー大賞」優秀賞を受けたのが1980年。このとき、24年生まれの江川さんは56歳だったことになる。その後、何作もの医療小説を書いていらしたわけだが、健筆ぶりは84歳の今も変わらない。もちろん、新作の『麻酔科医』(小学館)もそうだ。

主人公は新米の麻酔科医・神山慧太。南関東医療センターに赴任してきた慧太が、最前線の医療現場で悪戦苦闘しながら、少しずつ一人前の麻酔科医へと成長していく物語だ。

その物語の中では医療事故も起こる。死亡してしまう患者もいる。私生活では恋愛もある。しかし、小説としての背骨は、あくまでも「現場」にある。その現場で、医療従事者たちが毎日必死になって格闘している姿をこそ、描きたかったのだと思う。

江川さんは、長く看護師として働いてきた経験をもつ。主人公の慧太に大きな影響を与えている元看護師の祖母は、まるで江川さんご自身のようだ。医師としての自信を失いかけた慧太に、戦争中、K大学病院の新人ナースだった自分の体験を語って聞かせる。

それは足に大怪我をしている患者に対して、麻酔なしでその足を切断した手術の話だ。「あのころを思うと、慧太さん、あなたがやっていなさる麻酔科医療は、なんと尊い仕事か」。

もう一つ、祖母の言葉。麻酔科医は、完全に無抵抗な人間となった患者の「代弁者」だというのだ。「患者のために最善を尽くす、患者の立場になって考え行動する、という医師の本分を、これほど、具体的に表現し実践しなければならない診療科はほかに無いのでは・・・」。

やはり、この慧太の祖母は、江川さん自身に違いない。

麻酔科医
江川 晴
小学館

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<減煙コーナー>
昨日の手持ちは4本。朝食後に1本摂取。残りの3本しか持たずに大学へ。昼食後に1本。そして、午後の長かったこと。帰宅して夕食後に1本。夜は原稿書きがあるので、1本をキープしておきたかったのだ。原稿完成後にそれも吸い終わって、キワキワだったが、なんとか完走。

少し変ってきたと思うのは、自分が、この状況を面白がっているらしいという点かも。

昨日から、全国的にタバコ自販機は、カードの「タスポ」が必要になった。この減煙を始める以前に、タスポを作るのが面倒で、なんだかシャクで、結局作らなかったのも、丁度よかったみたい。本日(2日)は、いよいよ3本なり。