昨夜(14日夜)、20時から21時半まで、NHKハイビジョン特集「肉眼夢記・実相寺昭雄異界への招待」を見た。触れ込みによれば「ウルトラマンを演出した奇才の脳内世界。創造の源を京極夏彦が探る」ということだった。
京極夏彦さんと「メトロン星人」が案内役。ちなみに、メトロン星人は実相寺監督の『ウルトラセブン・狙われた街』に登場して、セブンと<四畳半の部屋>で向かい合ったことで知られている。
スタジオでの出演者は、実相寺作品の常連で、親友でもあった俳優の寺田農さん。『呪怨』の清水崇監督。評論家の唐沢俊一さん。そして、女性弁士の山崎バニラさん。番組全体としては、実相寺監督の生涯を追いながら、作品の解釈をしたり、実相寺ワールドを再現したりしていた。
この手の番組は、これまで相当な数を見てきたし、『乱歩の見た夢』というタイトルで番組を制作したりしてきた。ただ、自分が長い間接してきた人物に関して、こうした番組が作られ、それを見るという体験は、あまりない。監督の写真や映像、そして何本かの作品の、いくつかの場面を見ながら、確かに懐かしくはあるのだが、正直言って、複雑な気分だった。
監督をよく知る寺田さんや、カメラの中堀正夫さん、美術の池谷仙克さん、音楽の冬木透さん、また『ウルトラマン』の飯島敏宏監督などが語るときは大丈夫なのだ。ところが、たとえば京極さんが(さすが京極さんらしい)見事な解釈を披露したり、スタジオで唐沢さんが(これまた唐沢さんらしい)ウンチクを述べたりしているのを聞くと、何となくお尻がムズムズし、落ち着かなかったのだ。
それは、「なるほど、上手いことを言うもんだなあ」と感心しつつ、申し訳ないけれど、「でも、そうなのかねえ」と、少し冷ややかな目で、それらの「ご高説」を聞いている部分があった。
1981年に初めてお会いして以来、2006年に監督が亡くなるまでの25年間、様々な形で接してきたことによる、自分なりの「監督と監督の世界」という実感がそうさせるのかもしれない。また、自分が見てきた「監督の素顔」というものがあるからかもしれない。まあ、所詮「不肖の弟子」の独り言みたいなものなのだけれど・・・。
監督といえども、いや、監督だからこそ、これからも繰り返し、様々な解説や、解釈や、評価などが登場してくるのだろう。しかし、自分にとっての師匠であり、大のつくファンでもある監督が、こうして、ことあるごとに思い出され、また新たなファンを獲得していくのは嬉しいことなのだ。
実は、つい先日購入したのが、ちくま文庫の新刊『昭和電車少年』だ。7年前に出版された単行本の内容に、その出版後に書かれた何本ものエッセイが加えられており、”実相寺本”の愛読者には嬉しい1冊となっている。
監督と一緒に東京の各所を歩き、長崎や東北などの国内を回り、海外にまで旅をしたが、その間、とにかく鉄道や電車の話になると、本当に楽しそうだった。今夜は、この文庫を読みつつ、”昭和の電車少年”を偲ぼう。
京極夏彦さんと「メトロン星人」が案内役。ちなみに、メトロン星人は実相寺監督の『ウルトラセブン・狙われた街』に登場して、セブンと<四畳半の部屋>で向かい合ったことで知られている。
スタジオでの出演者は、実相寺作品の常連で、親友でもあった俳優の寺田農さん。『呪怨』の清水崇監督。評論家の唐沢俊一さん。そして、女性弁士の山崎バニラさん。番組全体としては、実相寺監督の生涯を追いながら、作品の解釈をしたり、実相寺ワールドを再現したりしていた。
この手の番組は、これまで相当な数を見てきたし、『乱歩の見た夢』というタイトルで番組を制作したりしてきた。ただ、自分が長い間接してきた人物に関して、こうした番組が作られ、それを見るという体験は、あまりない。監督の写真や映像、そして何本かの作品の、いくつかの場面を見ながら、確かに懐かしくはあるのだが、正直言って、複雑な気分だった。
監督をよく知る寺田さんや、カメラの中堀正夫さん、美術の池谷仙克さん、音楽の冬木透さん、また『ウルトラマン』の飯島敏宏監督などが語るときは大丈夫なのだ。ところが、たとえば京極さんが(さすが京極さんらしい)見事な解釈を披露したり、スタジオで唐沢さんが(これまた唐沢さんらしい)ウンチクを述べたりしているのを聞くと、何となくお尻がムズムズし、落ち着かなかったのだ。
それは、「なるほど、上手いことを言うもんだなあ」と感心しつつ、申し訳ないけれど、「でも、そうなのかねえ」と、少し冷ややかな目で、それらの「ご高説」を聞いている部分があった。
1981年に初めてお会いして以来、2006年に監督が亡くなるまでの25年間、様々な形で接してきたことによる、自分なりの「監督と監督の世界」という実感がそうさせるのかもしれない。また、自分が見てきた「監督の素顔」というものがあるからかもしれない。まあ、所詮「不肖の弟子」の独り言みたいなものなのだけれど・・・。
監督といえども、いや、監督だからこそ、これからも繰り返し、様々な解説や、解釈や、評価などが登場してくるのだろう。しかし、自分にとっての師匠であり、大のつくファンでもある監督が、こうして、ことあるごとに思い出され、また新たなファンを獲得していくのは嬉しいことなのだ。
実は、つい先日購入したのが、ちくま文庫の新刊『昭和電車少年』だ。7年前に出版された単行本の内容に、その出版後に書かれた何本ものエッセイが加えられており、”実相寺本”の愛読者には嬉しい1冊となっている。
監督と一緒に東京の各所を歩き、長崎や東北などの国内を回り、海外にまで旅をしたが、その間、とにかく鉄道や電車の話になると、本当に楽しそうだった。今夜は、この文庫を読みつつ、”昭和の電車少年”を偲ぼう。
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