碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

ちゃんと作られた医療ドラマは社会派ドラマなのです

2008年07月22日 | メディアでのコメント・論評

『北海道新聞』から連絡が入り、「最近、医療ドラマが目につくようになった理由」について、コメントを求められた。確かに、この夏も、フジテレビ『コード・ブルー』、TBS日曜劇場『Tomorrow』など、いくつかの医療ドラマがスタートしている。

いろんなことが考えられるが、ざっと次のようなことをお伝えした。掲載予定は今週の金曜日、25日だそうだ。

もちろん、字数やスペースのことがあるから、ぎゅっと凝縮されたものが掲載されるはず。とりあえず、忘れないうちに、述べさせていただいた概要を、以下に記録しておこう。


(コメント概要)
医療ドラマは、どれだけエンタテインメントの要素を含んでいても、本質的には<社会派ドラマ>だといえます。なぜなら、医療システムとは、社会システムそのものでもあるからです。

安直な恋愛ドラマや、若者ばかりを狙った軽めのドラマに飽き足らなくなった視聴者にとって、現実を巧みに取り込こみ、起伏に飛んだストーリーの社会派ドラマは大歓迎なのです。たとえば経済問題をドラマ化して成功したNHK「ハゲタカ」もそうでした。

今や、医療は、経済と並んで、市民の大きな関心事です。現在ほど医療が危機に直面している時代はなく、市民の間に、医療に対する危機感・不安感が充満している時代はないといえます。

それでいて、医学の世界は、なかなか外部からはうかがい知れないものです。市民(視聴者)がもつ医療そのものへの関心が、医療ドラマを支持する要因の一つだといえるでしょう。

また、医療ドラマの主人公である医師は、「強き(病気)を挫き、弱き(患者)を助ける」のですから、本来「ヒーロー」の要素をもった職業です。ならば医療ドラマは、生と死という究極のテーマを扱う<ヒーロードラマ>だということになります。

さらに、医療ドラマが注目されるようになった背景には、<医療小説の隆盛>があります。山崎豊子「白い巨塔」のリバイバル・ヒットだけでなく、ここ数年、山崎作品や渡辺淳一作品以外にも、新たな書き手の、優れた医療小説が登場してきました。

たとえば、海堂 尊「チーム・バチスタの栄光」、東野圭吾「使命と魂のリミット」、久間十義「生命徴候あり」などです。荻原浩「明日の記憶」も一種の医療小説でした。医療自体がもつドラマチックな要素を、医療小説が証明した形となり、制作者が医療ドラマに向かっていく際の自信につながっていると考えます。

チーム・バチスタの栄光
海堂 尊
宝島社

このアイテムの詳細を見る


使命と魂のリミット
東野 圭吾
新潮社

このアイテムの詳細を見る


生命徴候あり
久間 十義
朝日新聞出版

このアイテムの詳細を見る


明日の記憶
荻原 浩
光文社

このアイテムの詳細を見る