碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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怒涛の量産が続く新堂冬樹さん

2009年03月03日 | 本・新聞・雑誌・活字
最近、新堂冬樹さんの“量産”ぶりが目立っている。

特に、芸能界を舞台としたエンターテインメントが元気いっぱいだ。

少し前に出た『枕女優』の路線上にあるのが、『女優仕掛人』。

16歳の新人女優・千紗を世に出すべく、必死の努力を続けるのが、プロダクション社長の上杉だ。

彼の様々な営業活動もすごいが、千紗という女の子のトップ女優への執念がすさまじい。この世界で頼りになるのは、「強くてできる男」であることを知っているのだ。

連載されたのが「日刊ゲンダイ」ということもあり、男性読者の興味を引くエロスもふんだんに盛り込まれている。

小説なので、もちろん誇張はあるが、芸能界の裏側、タレントプロダクションの熾烈な戦い、といった部分は迫力満点。

何しろ、新堂さん自身が、タレントを抱える「芸能プロ」の社長なのだ。

いや、芸能プロ社長が作家になったわけではない。逆だ。作家が芸能プロの経営に乗り出したのだから面白い。

もう一作は『アンチエイジング』。

加齢、老化を防ぐというか、抑えるというか、とにかく、より若さを維持しようという取り組みの悲喜劇が描かれている。

登場するのは、ひと組の夫婦。妻は妻なりに、夫は夫なりに、“アンチ”を欲する理由があるのだ。

最近の、よく見かけるクルマのCMで、「わたしたち、主婦で、ママで、女です!」みたいなコピーがある。

ま、確かにそうなんだけど、これって、どうしても最後の「女です」に力点があるように聞こえてしまい(違ってたらゴメンナサイ)、また、こんなふうに公衆の面前で(?)声高に叫ばれちゃうと、どこか居心地が悪いのはワタクシだけでしょうか。

世の男性が、「俺たち、サラリーマンで、父で、男です!」って叫ぶのも、きっとヘンな気分になるんだろうけど。

ま、とにかく、『アンチエイジング』に出てくる妻も、「主婦で、ママで、女です」の「女です」に重点を置くことに目覚めてしまい、あれこれ大変なことになっていくのですよ。

怒涛の量産体制が続く新堂さんの最新刊は、未読の『不倫純愛』。

何やら、こちらも大変そうだなあ(笑)。

女優仕掛人
新堂 冬樹
角川グループパブリッシング

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アンチエイジング
新堂 冬樹
ポプラ社

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不倫純愛
新堂 冬樹
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