碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

日本テレビ社長辞任の<謎>

2009年03月17日 | テレビ・ラジオ・メディア
なぜだ。

うーん、わからん。

日本テレビの久保伸太郎社長は、このタイミングで、なぜ“辞任”なのか。

確かに、報道機関として、今回の問題は重い。

いや、だからこそ、反省と共に、なぜこの「誤報」が生まれたのか、そのプロセスを明らかにすべきだった。

しかし、久保社長は、記者会見で「誤報の原因」について問われた際、「私が職を辞したということで、すべての説明をつけたいと思います」と言うにとどまった。

つまり、原因(真相)については聞いてくれるな、ということになる。

これは、おかしい。

まるで、辞任によって、今回の件全体の<幕引き>をしたかのように聞こえる。

これから、どんな”不都合な真実”が出てきても、「もう辞任で責任はとった」と言いたいかのようだ。

だが、そうはいかないはずだ。

一体、何が起きたのか、起こしたのか。

元役員の虚偽証言に騙されたというなら、「なぜ騙されたのか」が重要なのだ。

報道機関として、取材のプロセスのどこに問題があったのか。今後のためにも、しっかり検証する必要があるし、その検証結果を公表・説明する責任もある。

そんな検証作業よりも先に、「辞任」と「処分」を決めてしまったところが謎なのだ。

なぜなら、検証によって、コトの重大性なり、問題の深さなりが見えてくるわけで、進退や処分はそれによって判断されるはずだからだ。

現時点で、いくつか考えられることがある。

1)
東京新聞が報じているが、取材過程において得られた岐阜県側の「回答」を、本来の質問とは別の質問の答えとして使った件。

「バンキシャ!」側から「会計検査院が指摘した不正経理について」として取材があり、県出納管理課長が「調査する」と回答。

番組では、その回答を「裏金の虚偽証言についての対応」として放送した、というのだ。

事実であれば、放送されたVTRの中に、“捏造”に近い部分が含まれていたことになる。

2)
虚偽証言をした元役員は、その理由・目的として「謝礼金」を挙げている。カネ目当ての行為だったわけだ。

問題は、本当に「バンキシャ!」側が、この元役員に、本当に謝礼金を支払ってはいないのか、ということ。

この点について、久保社長は会見で否定したが、ならば、外の”条件”や”見返り”はなかったのか。ここは再度明らかにすべきだろう。

しかし、もしも謝礼金を支払っていた場合、局内のルールはどうあれ、ジャーナリズムの取材方法として、論議を呼ぶことは確かだ。

3)
これが最悪のケースだが、元役員の虚偽証言に「騙された」のではなく、虚偽と知っていて、わかっていて、これを撮影し、放送した場合。

これだと、もはや「誤報」ではない。「捏造報道」になってしまう。

これなら、社長辞任も当然だろう。しかし、今、日テレからそんな情報は出ていない。


以上のように考えてくると、この「虚偽証言報道問題」をめぐって、日テレが明らかにすべきことは山積しており、本当は、辞任や処分より、そちらこそが優先されるべきなのだ。

というわけで、現段階でのこの辞任、やはり<謎>である。