碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

作家や作品との<相性>もあるわけで・・・

2009年03月04日 | 本・新聞・雑誌・活字
大失敗である。

悔しい。

残念だ。

私は、実に素直な<本好き>であり、誠に単純な<活字好き>であり、チラシ広告の文章だって楽しんでしまうほうだ。

そんな私でも、やはり相性の悪い作家さんとか、合わない作品というのはあるわけで、今回は、まさにソレだった。

長嶋有さんの『ねたあとに』である。

登場人物は、ある山荘に暮らす、ちょっと変わった父と子。そして、そこに集う、これまたちょっと不思議なキャラの人々。彼らの、ひと夏のお話だ。

全編を通じて、いくつものオリジナル風ゲームというか、遊びが出てくる。

たとえば、麻雀牌を使った「ケイバ」と呼ばれるもの。サイコロを使った「顔」。そうそう、アレンジされた「軍人将棋」もある。

本人たちは面白がっているが、読んでいる私は、あまり楽しめない。いや、このゲームだけでなく、小説全体に対して、どうにもノルことができなかった。

ストーリーが波乱万丈でなかろうと、筋らしい筋がなかろうと、微妙なニュアンスのみを味わうものであろうと、たいていの小説は、それなりに楽しんでしまうのだが、この作品は、うーん、どうにもこうにもダメでした。

奥付を見て分かったのだが、この作品、朝日新聞の連載小説だった。

私は、長編小説が連載物の場合、基本的に新聞や雑誌の連載時には読まない。単行本になってから読ませていただく。

だから、朝日新聞は購読しているのだが、この小説は読んでいなかった。いや、もしも連載時に、一度でも目を通していたら、今回、こうして単行本を手にしなかっただろう。

しかし、それにしても、朝日新聞の読者の方々は、1年もの間、これを毎日、読んでいたんだろうか。読んで、楽しめたんだろうか。聞いてみたいような気がする。

そういえば、長嶋さんの芥川賞受賞作『猛スピードで母は』も、当時、読んでみて、まったく馴染めなかったのだ。ついさっき思い出した。

『猛スピードで母は』の後、しばらくして、「そろそろどうかな」と思い、読んでみたのが『エロマンガ島の三人』。

これもダメだった。それなのに、また手を出してしまったのだ。

大失敗。後悔。残念。でも、私が悪い。

『ねたあとに』を、無理をしながら、辛抱して読み終わったのが、ちょうど某病院のロビーだった。気分は落ち込んでいた。

で、何とか“口直し”をしたくて、売店に走った。

もちろん、あまり目ぼしいものがあるはずもなく、購入したのは、東海林さだおさんの文春文庫の新刊『ショージ君の養生訓』である。

病院の売店で入手した“養生訓”というのも出来すぎだが、そこはショージ君。健康法に関しての、笑えるエッセイや対談が満載で、かなり“口直し”になった。慰められた。

ショージ君に感謝です。

ねたあとに
長嶋 有
朝日新聞出版

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ショージ君の養生訓 (文春文庫)
東海林 さだお
文藝春秋

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