道尾秀介さんの新刊『鬼の跫音(あしおと)』(角川書店)が、じわりと、怖い。
『カラスの親指』が直木賞候補となった道尾さん。
これが初の短編集だが、ミステリーとホラーが融合した、独特の作品世界を堪能できる。
冒頭の「鈴虫」では、ある<完全犯罪>が描かれる。11年後に事件が発覚した時、捕まった男はいう。
「人間なんてね、生きてるだけでみんな犯罪者ですよ」。
やがて、読者は警察も気づいていない驚きの真相を知ることになるのだ。
青春のあやまちと呼ぶには重過ぎる罪を犯した主人公が、20年後の祭りの夜に恐ろしい制裁を受けるのは「よいぎつね」だ。
神社の境内。
お神輿を納めた蔵。
河原の土手。
誰もの記憶の中にある何気ない風景が、道尾さんの手にかかると逃れられない宿命の舞台と化す。
また、「遠くから鬼の跫音が聞こえる」という書き出しで始まる「冬の鬼」は日記形式の一篇。
元旦から8日までの記述が、なぜか日付の古い順に並んでいる。
書き手である女性の思考と視点だけを追ううちに、ふと背筋が寒くなってくる。
鬼は人間のこころに巣くう魔物。姿の見えないその怖さは収録の6篇に共通しています。
『カラスの親指』が直木賞候補となった道尾さん。
これが初の短編集だが、ミステリーとホラーが融合した、独特の作品世界を堪能できる。
冒頭の「鈴虫」では、ある<完全犯罪>が描かれる。11年後に事件が発覚した時、捕まった男はいう。
「人間なんてね、生きてるだけでみんな犯罪者ですよ」。
やがて、読者は警察も気づいていない驚きの真相を知ることになるのだ。
青春のあやまちと呼ぶには重過ぎる罪を犯した主人公が、20年後の祭りの夜に恐ろしい制裁を受けるのは「よいぎつね」だ。
神社の境内。
お神輿を納めた蔵。
河原の土手。
誰もの記憶の中にある何気ない風景が、道尾さんの手にかかると逃れられない宿命の舞台と化す。
また、「遠くから鬼の跫音が聞こえる」という書き出しで始まる「冬の鬼」は日記形式の一篇。
元旦から8日までの記述が、なぜか日付の古い順に並んでいる。
書き手である女性の思考と視点だけを追ううちに、ふと背筋が寒くなってくる。
鬼は人間のこころに巣くう魔物。姿の見えないその怖さは収録の6篇に共通しています。
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