碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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『朝日新聞』で「バンキシャ!」問題についてコメント

2009年03月25日 | メディアでのコメント・論評

昨夕、日本テレビが、「バンキシャ!」に関する記者会見を行った。

久保前社長などからの「説明」と、「社内検証の途中結果」が伝えられたのだ。

「朝日新聞」は、今日(25日)の朝刊の「メディアタイムス」のページで、この件に関する特集記事を掲載している。

今回、「バンキシャ!」が、どんなふうに取材を進めていったのかが、ある程度見えてきた。

制作側が、問題の虚偽証言をした人物を“見つけた”きっかけが、インターネットの「取材協力者・出演者募集サイト」で情報提供を呼びかけたことだったというのも驚く。

しかも、この証言者(元会社役員)は4年前にも「バンキシャ!」に登場しているのだ。その時のネタは「バイアグラ体験」である。

さらに、テレビ朝日「スーパーモーニング」にも、耐震強度偽装問題などで、2度出ていた。

今回も、本人が「謝礼金が目的」と言っているわけで、テレビでの証言の“常連”だったのだ。

これ以外にも、制作側が、元役員に会って取材を行うよりも前に(!)、岐阜県庁を訪れ、担当者にカメラを向けていたことも判明した。

また、問題の岐阜県だけでなく、「山口県の裏金報道」も裏付けや確認が十全でなかったことが明らかになった。

その上で、日本テレビは、いわゆる「再発防止策」なるものを提示している。

それは、2班態勢の取材チームを一つにするとか、「危機管理アドバイザー」を置くといった内容だ。

詳細は「朝日新聞」の特集記事を読んでいただくのがいいと思う。

この記事の中に、私のコメントも出ている。

見出しは「報道への信頼失う」。例によって、記者の方に答えた多くの内容が、ぎゅっと凝縮されたものだ。


「取材は最初から構成があり、「裏金はない」と県側が否定する「絵」を単にはめ込んだだけ。謝礼を前提にしていることも含め、作り手側が「報道」と思っていないことの表れだ」

「どこかでチェックが利かなかったのか、個人でなくシステムの問題として考える必要がある。このずさんさは今回の件だけなのか」

「番組全体も見直さないまま、再発防止策が示された。取材体制を1チームにすればさらに取材がタイトになるうえ、何でも危機管理アドバイザー任せになり、ますます現場で判断しなくなるのではないか」

「これでは視聴者が「報道番組だけは」と思っている信頼さえ失いかねない」


今回の件は、現在のテレビが“内蔵”する、いくつもの問題を露呈させている。検証も、検討も、まだ始まったばかりだ。