『東京新聞』に連載中のコラム「言いたい放談」。
5月4日の掲載分で、テレビ朝日の震災報道に関する特番について、書きました。
震災報道の自己検証
先週、テレビ朝日が報道特番「つながろう!ニッポン~テレビが伝えたこと 伝えたいこと」を放送した。
大震災から50日。内容はテレビ自身による震災報道の自己検証だった。
冒頭で地元局カメラマンが撮影した津波の様子が流された。
見たことのない映像も多く、あらためて被害のすさまじさを痛感する。
同時にその証言からは、「今、カメラを回していていいのか。目の前の被災者を救助しなくていいのか」というジレンマも伝わってきた。
また報道局編集長は原発報道に関して、「情報を正確に伝え、根拠のない不安感をあおらない」を方針にしていたと言う。
だが実際には、「冷静に」というメッセージが逆に不信感を生む場合もあった。
さらにテレビが報道した避難所にだけ支援物資が殺到する事態も発生した。
一方は収容しきれないほど物資があふれ、もう一方は学校のプールの水をろ過して飲んでいる。
番組では、報道が誤解や格差を広げたことを自問していた。
検証は時期尚早とか、言い訳ではないのかといった厳しい見方もある。
しかし、報道側が抱えるいくつものジレンマを告白する勇気と、それを踏まえた上での「被災地の人たちと視聴者をつないでいこう」という決意を素直に受けとめたい。
それが今後も継続される報道活動のベースとなるからだ。
(東京新聞 2011.05.04)