授業で取りあげた『NHK特集 江夏の21球』。
そのベースとなったのが、山際淳司さんが書いた同名ノンフィクションだ。
舞台は、1979年の日本シリーズ第7戦。
その翌年、雑誌「ナンバー」が創刊され、そこに山際さんは、短篇「江夏の21球」を寄稿し、実質的に作家デビューしている。
『スローカーブを、もう一球』には、「江夏の21球」をはじめ、高校野球に材をとった表題作などが収録されている。
備忘録に入れたのは、巻頭の「八月のカクテル光線」の中の一文で、スポーツだけでなく、山際さんが書いてきたスポーツ・ノンフィクションの醍醐味をも、伝えているように思う。
「ゲーム」――なんと、面白い言葉だろう。
人は誰でも、自分の人生の中から最低一つの小説をつむぎ出すことができるように、どんなゲームにも語りつがれてやまないシーンがある。
それは人生がゲームのようなものだからだろうか、それともゲームが人生の縮図だからだろうか。
――山際淳司「八月のカクテル光線」
(『スローカーブを、もう一球』収録)