碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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柘植久慶の小説『東京大津波』を読む

2011年05月08日 | 本・新聞・雑誌・活字

つい先日まで、中部電力は、定期点検中の浜岡原発3号機(静岡県御前崎市)の、7月運転再開を予定していた。

夏場の消費電力を考えてのことだろうが、微妙なタイミングだった。

そして今や、管直人首相の“要請”により「全面停止」がウンヌンされている。

“要請”自体の本当の是非はともかく、安全対策として、何をどこまで行っているのかは、やはり気になる。

東日本大震災が起きてしまった以上、もはや「想定外」という言葉は使えない。

マグニチュード9の地震も、巨大津波も「想定」した上での安全計画でなくてはならないのだ。

古書店で偶然見つけたのが、柘植久慶さんの小説『東京大津波~東海・東南海連鎖地震、ついに発生す!』(PHP文庫)。

2005年5月発行の書き下ろし作品だ。

「新橋と銀座が水没した!」全身ずぶ濡れの男女が震える声で告げると、秋川の背筋が寒くなった。高さ数メートルの浸水があった場合、地下鉄の乗客が助かる可能性など、ほとんど考えられなかった・・・。
200X年3月、震度7強を記録した東海・東南海連鎖地震は“大津波”に姿を変えて、日本の太平洋沿岸を蹂躙していく。水に飲み込まれた大都市の恐怖を、克明に描いた衝撃の近未来小説。


東京、名古屋、大阪、高知などが、同時に強烈な地震と大津波に襲われる様子は、フィクションとはいえ、「3・11」を経た現在、かなりリアルに読める。

結果的には、この小説が描いているのは大津波襲来までで、“その後”にくる原発事故のシーンは出てこなかった。

しかし、東海地震が発生した場合、今回の福島ような原発事故が起きないと予想するほうが難しい。

果たして、浜岡原発は本当に運転を停止するのだろか。