『日刊ゲンダイ』に連載中の番組時評「テレビとはナンだ!」。
今週の掲載分では、テレビ朝日のドラマスペシャル「最後の晩餐~刑事・遠野一行と七人の容疑者」について書いた。
なかなか見ごたえのある1本でした。
ドラマ「最後の晩餐」のお手柄は
自前の魅力的な刑事を生み出したこと
自前の魅力的な刑事を生み出したこと
先週土曜の夜、テレビ朝日がドラマスペシャル「最後の晩餐~刑事・遠野一行と七人の容疑者」を放送した。
主演が佐藤浩市、脚本は「白い巨塔」などの井上由美子。共演者には西田敏行や黒木瞳も並び、期待を裏切らない力作だった。
恋人を殺されたシェフ(成宮寛貴)が恨みをもつ面々を自分のレストランに招待し、一挙に罰を与えようとする。
しかし途中まで、彼らが成宮に殺される理由が視聴者にも、佐藤たち警察側にもわからない。
彼らは成宮の恋人の死に直接関係ないからだ。
やがて真相が明らかになり、成宮と佐藤が対決するクライマックスがやってくる。
このドラマ最大のお手柄は遠野一行という魅力的な刑事を〝自前〟で生み出したことだ。
最近のドラマは小説や漫画の原作物が多い。
それはそれで面白いが、やはりオリジナル脚本による新鮮な物語も見たいのだ。
その点、遠野はいい。
彼には自分が逮捕した犯罪者(ARATA)の女(斉藤由貴)を妻にしたという過去がある。
それは警察組織では許されない結婚であり、かつての相棒・杉崎捜査一課長(六角精児、好演)との反目の原因にもなった。
しかも、出所したARATAは斉藤由貴に未練があり、彼女の気持ちも揺れ動く。
こうした背景が遠野の人物像に微妙な陰影をもたせているのだ。
続編を見てみたいと思う。
(日刊ゲンダイ 2011.05.16)
・・・・ただ、ただですねえ、少しご都合主義だったのが、爆発炎上した店内に飾ってあった「最後の晩餐」の模写が全くの無傷だったこと。
そして、やや納得いかないのが、佐藤浩市の妻が斉藤由貴だったことだ。
佐藤浩市とARATAの両方から思われる役が、近年膨張気味のヌイグルミ体形と相まって、NHK朝ドラでは“うるさいおばちゃん”にしか見えない斉藤由貴でいいのか(笑)。
力作の中の惜しいミスキャストでありました。