碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

NHK「仕事ハッケン伝」の“お役立ち度”

2011年05月24日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「テレビとはナンだ!」。

今週は、NHKの「仕事ハッケン伝」について書いた。

仕事をコンセプトにした番組をいくつも制作しているNHK。

これはその新機軸というわけだが・・・・


「仕事ハッケン伝」は就職氷河期の学生の参考にならない

何度かのお試し放送を経てNHK「仕事ハッケン伝」がレギュラー化された。売り文句は「有名人が特別扱い一切なしで憧れの職業に挑む」だ。

第1回はペナルティのワッキーが中華レストランチェーンで料理人修業。わずか一週間で一人前になれるはずもないが、何とか客に出せるニラレバ炒めを作り上げた。

2回目は博多華丸が最先端IT企業に。仮想空間でのイベント企画に挑んだ。

真剣に中華鍋を振るワッキーについ感動したりするが、それはあくまでも一週間という期間限定でのこと。

タレントもカメラが回っていれば何らかの結果を出すべく必死になるのは当然だ。

そもそも、いきなり入ってきた新人に“絵になる”ような仕事をさせてくれること自体、「特別扱い」なのである。

またこの番組で扱われるのが有名企業ばかりというのも感心しない。

ワッキーは餃子の王将。華丸がサイバーエージェント。以前の単発放送の頃もグーグルやアマゾンであり、今後はユニクロなどが登場する。

ここ何年も就職氷河期とか超氷河期と呼ばれるが、学生たちの視野の狭さにも遠因がある。有名企業や大企業にばかり目が向いているのだ。

実際には、名前は知られていないがキラッと光る会社、規模は小さいが世界的な企業がたくさんある。

この番組がハッケンすべきはそんな会社と仕事なのではないか。

(日刊ゲンダイ 2011.05.23)


・・・・いわば、「世界ウルルン滞在記」の“国内お仕事版”といった内容。

こういうのは、出演者がどれだけガチで取り組むか、にかかっている。

本当に一週間、その他の仕事を全部シャットアウトして、“新入社員”になりきっていることを、見ている側にもっとはっきり示す必要がある。

毎回、何かを達成できるほうが不自然なのだから、無理に成果を出そうとせず、試行錯誤や失敗そのものを、きちんと見せていけばいいと思う。