碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「金八先生」の退職と「鈴木先生」の登場

2011年06月02日 | 「東京新聞」に連載したコラム

『東京新聞』に連載中のコラム「言いたい放談」。

今回は、中学校を舞台にした2つのドラマ について書きました。

  
「金八先生」と「鈴木先生」


TBSの自己検証番組「TBSレビュー」に出演した。

三十二年も続いて、先ごろ幕を閉じた「3年B組金八先生」の話をさせていただいた。

「金八先生」の特色の一つは、それまで学園ドラマが扱わなかったリアルな教育問題や社会問題を果敢に取り込んだことだ。

「15歳の母」「腐ったミカンの方程式」をはめ、性同一性障害やドラッグなどのエピソードを記憶している人は少なくない。

次に主人公のキャラクター。

ヒーロー的な二枚目ではなく、スポーツもしない。夕陽に向かって走る代わりに人の道を熱く説いたりする。

しかも役柄と演じる側(武田鉄矢)が一体化していた。

かつて教育大学で学んだ武田はドラマの中で教壇に立つ夢を実現させ、視聴者は半実在の教師として金八を支持し、同時代を共に生きてきたのだ。

そしてこの春、「金八」と入れ替わりに登場したのがテレビ東京「鈴木先生」である。

教育熱心ではあるが、中学校の教室は自らの教育理論の実験場。また美しい女子生徒とのあらぬ関係を妄想したりする困った男だ。

しかも鈴木の思考過程は画面にテロップ表示され、映画調の映像と相まって強烈な印象を与える。

ごく普通と思われる生徒の中に潜む悪意や教師の心の奥も描こうとする意欲作。

拒否反応を示す視聴者も多いだろうが、終了までに一見の価値はある。

(東京新聞 2011.06.01)


・・・・「TBSレビュー」のオンエア同録を、授業で、学生たちと一緒にプレビューした。

学生たちにとって、知っている人(というか目の前にいる人)がテレビ画面に出てくるというシチュエーションは珍しい。

しかも、その画面の中の自分(つまり私)にツッコミを入れる出演者自身(これも私ですが)をライブで見るのも、滅多にない状況だったはず。

その上で、番組に対する反応がなかなか面白かったです(笑)。