碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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売れない芸人の「低収入ぶり」で笑えるか

2011年06月21日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中の番組時評「テレビとはナンだ!」。

今回は、TBS「奇跡ゲッター ブットバース!!」を取り上げました。


売れない芸人の月収をネタにして
何が面白いのか


土曜夜8時といえばかつてはゴールデンタイムの王様だった。

とくにTBSは「8時だヨ!全員集合」というお化け番組を擁して、長年この王座に君臨したものだ。

現在は「奇跡ゲッター ブットバース!!」を放送中。

スタート時は「これは奇跡だ!という人物や現象をお届けする」とのフレコミだったが、今やほとんど迷走状態だ。

先週の「芸人どん底月収ベストテン~夫を支える芸人いい妻NO.1決定戦」もひどかった。

もっとも低かった月収を「どん底月収」と名付け、ランキング形式で当の芸人とその妻を紹介していくのだ。

芸人で収入が低いのは売れていないからで、視聴者は名前も顔も知らない芸人ばかりを見せられることになる。

第3位は「くらげライダー」の松丘慎吾で、どん底月収9800円。

第2位のラジバンダリ西井は7500円。

そして第1位が元「R(ろっこつ)マニア」の松丘慎吾で、スバリ0円。

だが、これのどこを笑えというのだろう。

ちなみに司会はネプチューンだが、彼らは立派な収入を得ているはず。

また、この番組のプロデューサー氏の父親はTBSの朝番組を仕切るみのもんたで、ギャラが高額なことで有名。

そういうスタッフや出演者が、売れない芸人はそんなものだとして、低収入ぶりを笑いのネタにしている。そのセンスが情けない。

土曜8時が泣いている。

(日刊ゲンダイ 2011.06.19)


・・・・“土曜8時が泣いている”と書いたが、まさに実感。

それこそテレビの、というか電波の使い方として、いかがなものか。

時節柄(?)、「見せるべきものがないなら節電のためにお休みしたら」と言われた際も、反論が難しいような1本でした。