碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「民放全局の19時台視聴率が1ケタに」という局Pの嘆き

2011年06月18日 | テレビ・ラジオ・メディア

昨日(17日)、「J-CASTニュース」に興味深い記事が掲載された。

14日(火)の19時台、民放の視聴率が軒並み1ケタだったというのだ。

そのことを“発信”したのが局P(放送局のプロデューサー)だった、という点も面白い。


タイトル:
「民放の19時台視聴率が1ケタになった」 テレ朝プロデューサーの「ツイッター」に「当然」の声

テレビ朝日の藤井智久ゼネラルプロデューサーが「ついに民放全局の視聴率が1ケタになった」とツイッターで呟いているとネットで話題になっている。

1ケタになったのは19時台全ての番組。もともと19時台はゴールデンタイムの入り口で、視聴率や広告収入が見込めたドル箱。

しかし、10年ほど前から不振が続き、メインターゲットとしていた小学生から高校生がテレビから離れてしまったという。

  「見たい番組がない」など大量のリツィート

藤井ゼネラルプロデューサーは2011年6月15日、ツイッターで「ついに昨日、19時台の民放は全局、視聴率が1ケタになった(関東地区)」と呟いた。

昨日というのは14日(火)のことで、新聞のテレビ欄を見ると「泉ピン子宮古島に来襲」「AKBVS戦隊ヒーロー」「熟女4人が下町電車旅」などの番組が並んでいる。

この呟きがネットで大きな反響を呼んでいて、
「正直、見たい番組が、ない…TV 本当にもういらないかも・・・」
「5年後にゴールデンが全局一ケタでも驚きもしない」
などと「当然」と受けとめるリツイートが大量に寄せられている。

放送評論家の松尾羊一さんによれば、昔から19時台はゴールデンタイムの入り口として、まずは小学生から高校生を集める番組制作が行われた。

20時台になれば会社から家族が戻り、家事も一段落。家族全員でテレビを見ながら団欒する、という流れがあった。

しかし、携帯電話やゲーム、パソコンなど普及によって19時台の視聴者は10年前から急速にテレビ離れしていった。

  復活のヒントは池上彰に学べ

視聴率が下がると制作費が削られるため魅力的な番組が減るスパイラルに陥り、起死回生策としてマンガやゲームでヒットした作品を持ってきたりもしたが、

「他のメディアでヒットした作品におもねても、テレビで成功するわけではない。若い人は感覚が鋭いため納得のいかないものは見ない」

さらに、番組が一部の人しか興味を示さないような狭い内容になってきた。こうしたことが視聴率が取れなくなった原因だと松尾さんは説明する。

もう19時台の視聴率復活は難しいのかというと、復活のヒントはあるのだそうだ。

実は、19時台で高視聴率を記録した番組があり、それはテレビ朝日系で08年から19時台に放送した池上彰さん司会の「学べる!!ニュースショー!」。

この番組はティーンエイジャーが主な視聴者で大うけだった。10年からは放送が8時台に移り「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」に番組名が変更になった。

「見てわかりやすいし、勉強になるだけでなく楽しめる。この応用としてドラマやクイズ、バラエティー番組を制作する。そこに若い人達のニーズがあるのではないかと思います」

そう松尾さんはテレビ業界に対し提言している。

(J-CASTニュース 2011.06.17)



・・・・記事を読んでの最初の感想は、「そうか、これって初めてなんだ」というもの。

てっきり、ここ数年の中で、「民放全局の19時台視聴率が1ケタ」という事態を経験していると思っていた。

「ついに・・・」と藤井Pはつぶやいたそうだが、逆に、「よくここまで、そうならずに来たもんだなあ」と感じる。

申しわけないけど、記事にあるようなラインナップが続くなら、「19時台横並び1ケタ」はこれからも続発するはず。

松尾先生(と私は呼んでいます)の提言にも、しっかり耳を傾けるべきだと思います。


「朝日ニュースター」番組審議委員会が開かれた

2011年06月18日 | テレビ・ラジオ・メディア

CSのニュース・報道チャンネル「朝日ニュースター」。

“ジャーナリズムTV”を標榜するこの放送局の、番組審議委員会に出席した。

各放送局は法令により、放送番組の改善を目的とした番組審議委員会を設置しなくてはならない。

そして、客観的評価を行えるように、必ず外部の人間で構成されている。

現在の朝日ニュースター番組審議委員会のメンバーは・・・・


委員長:
大石 裕(慶應義塾大学教授)

委員:
坂東 眞理子(昭和女子大学学長)
田中 優子(法政大学教授)
隈元 信一(朝日新聞編集委員)
碓井 広義(上智大学教授)
砂川 浩慶(立教大学准教授)
兼高 聖雄(日本大学芸術学部教授)


・・・・私はともかく、なかなか豪華な顔ぶれであり、このまま有料のシンポジウムを開いても十分にお客さんを呼べるほどだ(笑)。

実際、一堂に会しての話し合いは実に刺激的なものだった。

残念ながら、その詳細を語るわけにはいかないが、朝日ニュースターのWEBサイトで概要が公表された・・・・


審議内容と委員からの主な意見は以下のとおりです。

議題1
2011年度新編成について


<審議内容と主な意見>
●「科学朝日」「海堂ラボ」など特定分野を深く伝えていくコンテンツは良い。
今後、農業や環境などジャンルを決めて、特化して伝える姿勢は、広く浅くワイドショー的に伝える手法と一線を画して局の売りにもなるのではないか。

●実力のある女性をもっと起用すべきである。

●全体的に一色なイメージだ。対話型の討論、集団討論の番組が多く、番組表を見てもその違いがよくわからない。

●30代以上の社会的関心の高い人々の「知識を得たいという欲求」にこたえるコンテンツを土日の午前中に編成するのはどうか。

●視聴者の年齢層を拡大するためにも、中学生や高校生をターゲットにするコンテンツがあってもよい。


議題2
東日本大震災の報道への取り組みについて


<審議内容と主な意見>
●地上波に出ないようなゲストを呼んで番組を作ることには大いに勇気が必要だったに違いないが、一連の報道でそうした姿勢を貫いたのは良かったと思う。

●特色ある震災報道を評価したい。今、メディアに対する不信が高まっており、今後、テレビメディアとしてこの局が、どんな路線を打ち出して伝えていくのかは重要だ。


議題3
番組「ニュースにだまされるな!」について


<審議内容と主な意見>
●この番組は良かったと思う。番組の良し悪しは、ゲストの人選でほぼ決まってしまう。何も知らなかった人にとって、この番組はとても勉強になったと思う。

●ゲストが多く、発言が埋没してしまった。話が盛りだくさん過ぎて、時間が足りない。

●テーマが具体的で、他の番組に比べてよかっただけに、司会の金子勝氏には、もっと他の出演者の話を引き出すための「質問のチカラ」を持って欲しい。

●番組の最後に、司会の金子勝氏と中村うさぎ氏が、今日の話の中身を振り返る時間を作ってみるのも良いのではないか。

このような質疑応答や意見交換が行なわれました。



・・・・というわけで、朝日ニュースターには、いろんな意味で(笑)ここでしか見られない報道・討論・解説番組が並んでおり、番組審議委員ということを抜きにしても、かなり面白い。

「ニュースの真層」
「ニュースにだまされるな!」
「愛川欽也のパックイン・ジャーナル」
「闘え!山里ジャーナル」
「宮崎哲弥のトーキング・ヘッズ」
「激論!クロスファイア」などなど

デジタルテレビになって、CSがかなり見やすくなったので、一度チェックしてみてください。