『東京新聞』に連載しているコラム「言いたい放談」。
今回は、フジテレビ「マルモのおきて」について書きました。
日曜夜9時、TBS「JIN―仁―」の真裏という、一種“火中の栗”みたいな枠(笑)での大善戦。
いや、お見事です。
「マルモのおきて」好調のワケ
フジテレビのドラマ「マルモのおきて」(日曜夜九時)が好調だ。
視聴率も同じ時間帯のTBS「JIN―仁―」に迫る16%台である。
描かれているのは亡くなった親友の遺児(芦田愛菜と鈴木福)を引きとった独身男(阿部サダヲ)の日常生活であり、びっくりするような事件が起きるわけではない。
それがなぜ大作ドラマに負けない強い支持を得ているのか。
理由はいくつかある。
悪人が一人も出てこない、ほのぼのとしたホームドラマであること。
ポテトチップスのCM以来、キモカワイイ俳優として認知された阿部サダヲの快演。
「パパと呼ばないで」の杉田かおる、「おしん」の小林綾子に匹敵する天才子役ぶりを発揮している芦田愛菜の魅力等々。
しかし、もしもこのドラマが震災前の放送だったら、それほど評判にならなかったはずだ。
「3・11以降」という社会的背景が大きく寄与している。
親友とはいえ他人の子どもを預かり育てるマルモは、いわば究極のボランティア男だ。
そして大事なことはマルモもまた子どもたちに支えられ、助けられているという事実だろう。
誰かをケア(手当て)することで、自身もケアされていく。
しかもマルモはそれを義務や責任ではなく、当たり前のこととして明るく楽しそうに実践しているのだ。
早くも続編が見たくなってきた。
(東京新聞 2011.06.15)