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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

阿川佐和子さん、円熟の「聞く力」

2012年02月01日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中の番組時評「TV見るべきものは!!」。

今回は、阿川佐和子さん出演のトーク番組、TBS土曜朝7時半「サワコの朝」について書きました。

つい先日、阿川さんの新著『聞く力』(文春新書)も発売されたところです。


阿川佐和子のバランス感覚が
冴えるトーク番組

「週刊文春」で必ず読むものに、「阿川佐和子のこの人に会いたい」がある。すでに900回を超えるが、この手のインタビューは「その場ならでは」の話をどれだけ引き出せるのかが命。阿川佐和子は自分と相手との距離のとり方、またどこまで突っ込んだ話を聞くかなど、そのバランス感覚が見事である。

そんな阿川のトーク番組が「佐和子の部屋じゃなく「サワコの朝」(TBS)だ。先週のゲストは清水ミチコ。自身のモノマネを点線系、震え系などと分類しながらの解説と実演は楽しく、憧れの矢野顕子や恩師としての永六輔にまつわる裏話も興味深かった。「聞き手が阿川だから」の雰囲気がうかがえた。

テレビは雑誌と違ってゲストの表情や声のトーンまで伝えてしまう。いいことを言っていても顔を見れば嘘がバレてしまう怖さがある。また、いわゆる番宣やPRで出てきたゲストもその意図ばかりが目立って恥ずかしいものだ。その点、この番組は気持ちがいい。

これまでの放送の中では作家の綿矢りさ、宮沢りえ、バイオリニストの高嶋ちさ子などの回も見ごたえがあった。普段は見えない部分、知っているようで知らない側面が自然な形で出ていたからだ。天才的〝聞き役〟アガワ、円熟の技である。

(日刊ゲンダイ 2012.01.31)