碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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北海道新聞で、「通販番組」についてコメント

2012年02月18日 | メディアでのコメント・論評

先日取材を受けた、「通販番組」に関する記事が、北海道新聞に掲載されました。

「通販番組」はCMではなく、文字通り「番組」として扱われている。

CMは視聴者の消費行動を刺激するだけだ。しかし、CMの総量は放送法の規制を受けている。

一方、通販番組は視聴者に直接、物を売っているわけだが、その量は規制されていない。やろうと思えば、好きなだけ流すことが可能。

その利便性や必要性を踏まえた上で、全体とのバランス、つまり通販番組の「割合」が気になるのだ。


TV通販番組 道内多め
5局の平均割合8.2% 東京は6.1%

「通販番組が多い」との視聴者からの批判を受け、総務省は昨年、テレビ局に番組ジャンル別の放送時間公表を義務付けた。その結果が昨年末、初めて公表された。

道内民放5局の「通販番組」比率は平均8.2%。東京のキー局の同6.1%よりも高かった。また、全国で見られるBS局のうち主要5局は同32.5%に達した。

道内各局は「通販番組は買い物が不便な地域の人にとって欠かせない」と話すが、専門家からは「公共の電波であり、現状は多すぎる」との指摘も出ている。

放送局「買い物弱者に必要」
専門家「公の電波、5%以下」


放送倫理・番組向上機構(BPO)によると、「どのチャンネルをつけても通販番組ばかりだ」などの苦情や意見は2003年ごろから増え始めた。

こうした声を受け、総務省は昨年3月施行の改正放送法で、各局に番組を「教養」「教育」「報道」「娯楽」「通販」「その他」に分類し、毎月第3週分の放送時間を半年ごとに公表するよう義務付けた。

今回公表されたのは、昨年7~9月の3ヶ月分。道内民放5局が公表したデータから、CMを除いた総放送時間に占める通販番組の割合を計算すると、最も高いのがTVHの10.8%で、HBC9.5%、STV8.1%、HTB7.9%、UHB4.8%と続いていた。

東京のキー局ではテレビ東京の12.5%が最も高く、フジテレビの2.2%が一番低かった。BS局のうち東京のキー局系列5局では、BS日テレの37.5%が最高で、最低はBS朝日の27.4%だった。

通販番組の比率を規制する法律や規則はなく、同省は「比率が高いか低いかは、各放送局や視聴者が判断すること」としている。

通販番組を道内各局はどう位置づけているのか。TVHは「買い物に不便な地方の人にとって欠かせない存在」、HBCも「今後も相応の需要が見込まれる」と面積が広い北海道ならではの必要性を強調。各局とも「番組全体のバランスをとっている」と説明する。

だが、ある道内民放関係者は「通販番組はスポンサーが番組枠ごと買ってくれるので、局としては制作費をかけずに済む。正直、放送すればするほど、もうかる」と本音を明かす。

背景には、長引く不況やインターネット普及による広告費の減収、地デジ化に伴う経費増といった苦しい台所事情もあり、視聴率が高くないBS局の通販番組の比率が高いのも、こうした理由によるところが大きいようだ。

通販番組について上智大学の碓井広義教授(放送論)は、「現状の比率は高すぎる。せめて5%以下にすべきだ」とした上で、「放送局は国から免許を与えられ、公共の電波を使っている。その電波を利用し、店を開いて視聴者に直接物を売っているようなもので好ましくない」と主張する。

稚内北星学園大学の張江洋直教授(メディア論)は時間数よりも内容に注目する。「15分や30分という長い時間をかけて情報番組のような内容を流し、最後に商品を宣伝して購入を促すケースがある」として、番組中に広告であることを明確に示す必要があると指摘している。

(北海道新聞 2012.02.15)