日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今回は、NHKスペシャル「わが子へ~大川小学校 遺族たちの2年~」を取り上げました。
NHKスペシャル
「わが子へ~大川小学校 遺族たちの2年~」
消えない悲しみと複雑な思いを静かに伝える
“こころのドキュメント”
「わが子へ~大川小学校 遺族たちの2年~」
消えない悲しみと複雑な思いを静かに伝える
“こころのドキュメント”
東日本大震災から2年。先週から今週にかけて、各局で関連番組が何本も流された。その中で特に印象に残ったのが、8日に放送されたNHKスペシャル「わが子へ~大川小学校 遺族たちの2年~」である。
石巻市立大川小学校では、全校生徒108人のうち74人が津波の犠牲となった。また11人いた教員も10人が亡くなってしまう。まさにあり得ないような悲劇だった。
番組には3組の遺族が登場する。妻と小学生だった長男を含む3人の子供を失った父親は、まだ見つからない我が子を探して今もショベルカーのハンドルを握っている。
また6年生の娘を亡くした父親は教育員会の調査結果に納得がいかない。しかし自身も中学校の教員であるため、声を上げることに二の足を踏んでいた。
そして大川小学校の教員だった息子に先立たれた母親は、その悲しみだけでなく、結果的に息子が生徒たちを守れなかったことへの負い目と共に暮らしている。
これは、「安全なはずの学校でなぜ?」という疑問に答える検証番組ではない。遺族たちの消えない悲しみと、生き残った者としての複雑な思いを静かに伝える“こころのドキュメント”だ。
時間が経って逆に増してくるつらさもあることを知ると同時に、あらためて震災とその犠牲者、遺族の存在を忘れてはならないと思わせてくれた。
(日刊ゲンダイ 2013.03.13)