碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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関西テレビの報道映像「偽装」をめぐって

2013年03月16日 | テレビ・ラジオ・メディア

先日、関西テレビが報道映像を偽装した、という報道がありました。

新聞によれば・・・・

『あるある問題』の関テレが報道映像を偽装 
匿名インタビューの人物入れ替え

関西テレビ(大阪市北区)の夕方の報道番組「スーパーニュースアンカー」で、報道局記者が匿名インタビューをした際、映像を他の人物に差し替えて放送していたことが12日、わかった。

同局をめぐっては平成19年に情報番組の捏造問題が発覚し、当時の社長が引責辞任するなど社会問題化。今回も報道局員が関わっていたことで番組のチェック態勢やモラルのあり方が問われそうだ。

同局によると、昨年11月30日放送分で、大阪市役所職員の「兼業」疑惑をめぐって内部告発者をインタビューした際、本人が映像での出演を拒否したため、制作会社のスタッフを撮影し、音声のみ本人のものを使って放送したという。

このインタビューは、同局会議室内で報道局記者とカメラマン、制作会社スタッフのクルー3人で30分程度行い、後ろ姿の制作会社スタッフを撮影。番組では、モザイクをかけて放送された。

放送から数日後、クルーの一人が「この手法でよかったのか」と報道局幹部に相談して問題が発覚。同局で調査した結果、「あくまで告発者を守るためで、告発情報などの事実を捏造したとは言い切れないものの、編集方法が不適切だった」として、報道局記者を口頭による厳重注意としたという。

同局は「提供者の取材時間に制約があったので、結果としてそういうことになってしまった。今回の事態を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努めたい」(企業広報担当)としている。

(産経新聞 2013.03.13)



やれやれ、「あるある」で懲りたはずの関テレで、しかも報道番組が、こんなことをやっているのか。

確かにテレビ報道では、「絵があるかどうか」は大きな問題だが、このケースはどうだろう。

何より、「別人を撮っておいてモザイクかければOK」とする制作側のレベルが情けない。

報道番組にも制作会社の人間が大量投入されているのが当たり前だが、自分たちが「報道マン」だという自覚をどれだけ持っているのか。

新聞記事は新聞記者が書くが、報道番組は必ずしも報道のプロが作っているわけではない、と言われても仕方ないような話だ。

せっかくこの報道内容には意義も価値もあるのに、その信憑性さえ問われるような、テレビ報道への信頼を自ら損なうような、残念な伝え方でした。


その後、番組サイトに掲載された「お知らせ」は以下の通り。

この内容で、「お知らせ」という表現も、ナンですかねえ(笑)・・・・

アンカー特集での「不適切な映像表現」につきまして

去年11月30日にアンカーで放送した特集の中で、「不適切な映像表現」がありました。その経緯と事実関係は、以下のとおりです。

特集は、夜間に工事現場で働く大阪市職員の「兼業の実態」を取材したもので、内部告発者が関西テレビのインタビュー取材に答えてくださいました。

この内部告発者は自身が告発したことを知られるのを非常に警戒され、インタビューの際、「自分の体が全く映らないようにしてほしい」と要望されました。

その結果、ピンマイクをつけた内部告発者にインタビューをしながら、同じ部屋にいた撮影スタッフの後姿を撮影する形になりました。声は内部告発者本人のものですが、映像は別人であり、「不適切な映像表現」でした。この件は放送の後、取材スタッフが上司に相談したことから明らかになりました。

関西テレビでは、今回の件は事実ではないことをでっち上げて伝える「ねつ造」や、事前に示し合わせて相手に作為的に行なわせる「やらせ」にはあたらないと考えています。

しかし、内部告発者を保護するためとはいえ「不適切な映像表現」であり、視聴者の皆様にお詫びいたします。

今後このようなことがないよう、再発防止に努めます。

(関西テレビ「スーパーニュースアンカー」WEBサイト)