聴覚に障害をお持ちの方々と市長との懇談の続きです。
「娘も聞こえない。しかし、娘は指文字やキュード(*)でコミュニケーションをとる方法を学んでおり、親の自分とも会話が通じない」
*キュード=口で母音、体の一部を使って子音をあらわす方法らしい。たとえば鼻を押さえ 「あ」という口の形で 「は」となるらしい。
「中途失聴の方で手話ができる人はどれくらいか」
との市長の問いに、手を挙げた方は参加者の中で1~2人。
前代表の方が
「中途失聴には高齢者が多い、手話マスターしにくい。6~7年勉強してやっと読み取れるようになった。できるだけ手話を覚えてほしいと話している」
と話しておられました。
以上のような当事者からの実情が話されたあと、聾協の会長から、区市のコミュニケーション派遣事業についての取り組みについて説明が行われ、なぜ無料にしてほしいと訴えているかという説明がさらました。
曰く
①基本的な権利に当事者負担はおかしい。
コミュニケーションは生きるための権利。他の障害への支援もその人々の権利。生きるための権利に自己負担を強いる法律が間違っている。
②福祉サービスの低下に直結。
無料で行われていた事業が、法律になったからと有料になるのは問題。厚生労働省も東京都福祉保健局も「これまで無料で合ったサービスは無料が望ましい」としている。有料化はサービスの低下。
③コミュニケーションは相互利益。
手話通訳や要約筆記を利用するのは聴覚障害者だけではない。病院では説明責任が問われる医師こそ利用者。後援会主催者こそ利用者。つまりコミュニケーションは社会全体で負担すべき。
と、まったくその通りだと思いました。
ある方が
「就職で面接に行く、手話通訳の派遣費10%の他に、通訳者の往復交通費の半額が聴覚障害者の負担になる」
と、サービス費以外の負担が生じることも明らかにしました。
こうしたやり取りの中で、今すぐ無料ということが無理なら、無料の範囲を拡大できないか、という要望も出されました。
市長は、
「コミュニケーション事業は相互利益ではあるが、他の障害がサービスを受けるのに有料で、すべての障害へのサービスを無料にするのは財政的に無理。悩むが、今後の法律の行方を見たい。無料を広げることについては検討する」
と、答えていらっしゃいました。
この他、
○要約筆記事業についてのPRの問題、
○市役所職員がぜひ手話を学んで窓口で生かしてほしい
○手話の講座を今後も維持してほしい
○要約筆記の講座も東村山市で開いてほしい
○防災無線が聴覚障害者にも分かるようにしてほしい
など、切実な要望が告げられました。
コミュニケーション 一口に言うけど
聞こえない人、話せない人の中に、さまざまな段階と、個々人のコミュニケーションの方法とレベル(手話力など)が違っていること、この権利を守ることは、やはり公の仕事であろうということの意を強く感じた日であった。